私的国語辞典_表紙絵2

私的国語辞典~二文字言葉とその例文~ セレクション106『さぞ(さぞ)』

前項目次次項

作者駐:
 『私的国語辞典』は全文無料で閲覧が可能です。ただ、これらは基本『例文』となっておりますので、そのほとんどが未完となっています。
 基本的にそれらの『例文』は続きを書かないつもりではおりますが、もしどうしても続きが気になる方は、投げ銭して戴ければ有料部分に続きを執筆いたしますので、よろしくお願いいたします。
セレクション106『さぞ(さぞ)』(376文字)



「ふうん、出張って、沖縄だったんだ」 

まるで地獄から聞こえてくるかのような初音の声に、僕は正座したまま、まるでライオンに睨まれた子犬のようにぷるぷると震えている。 

「行く前に言ってくれれば、一緒に行ってあげたのになあ」 

初音は『あげた』を一際強調すると、つまんなさそうに僕が買ってきたお土産を突いている。 

「泡盛ってさ、あっちで呑んだら、さぞや美味しいことでしょうねえ」 

彼女の嫌みっぽい口調がグサグサと僕の胸に突き刺さり、僕は吐き出すようにすみませんでした、と口にするのが精一杯だった。 

「ああ、良いなあ、沖縄。青い海!晴れた空!熱い陽射し!」 
「いや今は冬だからそんなに……」 

思わずツッコミを入れた僕を、彼女は冷酷な眼差しで睨みつける。 

「ああ?何か?」 
「……いえ、別に」 

僕はガックリとうなだれながら、何とかしてこの状況を打破しなければ、と必至に頭を回転させ始めた。 

(376文字)

『さぞ(さーぞ)』
 《副詞「さ」+係助詞「ぞ」から》
 [副](あとに推量の語を伴って)未知の経験を目前のことのように想像したり、他人の経験に共感したりするさま。さだめし。きっと。さぞかし。「旅行は―楽しかったでしょう」
 [連語]
  1 そのように。
   「げに―おぼさるらむ」〈源・須磨〉
  2 文末にあって、強く肯定する意を表す。そうだ。
   「うらうらと死なむずるなと思ひとけば心のやがて―とこたふる」〈山家集・下〉

(大辞林より引用)

#ならざきむつろの私的国語辞典

ここから先は

0字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?