私的国語辞典_表紙絵2

私的国語辞典~二文字言葉とその例文~ セレクション107『札(さつ)』

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作者駐:
 『私的国語辞典』は全文無料で閲覧が可能です。ただ、これらは基本『例文』となっておりますので、そのほとんどが未完となっています。
 基本的にそれらの『例文』は続きを書かないつもりではおりますが、もしどうしても続きが気になる方は、投げ銭して戴ければ有料部分に続きを執筆いたしますので、よろしくお願いいたします。
セレクション107『札(さつ)』(文字)



取調室に二人の男がいる。
格子の嵌まった窓側に座る青年は終始俯いたまま座っており、その彼とテーブルを挟んで座っているのは初老の刑事だった。

「――あのなあ、兄ちゃん」

刑事は溜息混じりで青年に問い掛ける。
青年はびくり、と震えるが、顔はあげようとしない。

金が無くて偽札で買い物しよう、って気持ちは、まあ解らんでもない」

だがな、と刑事は手に持っていた証拠品をひらひらと振る。
彼の手の動きに併せて、透明な袋の中の薄い紙切れがゆらゆらと揺れた。

「いくらなんでも、

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は無えってよ」

バレバレじゃねえか、と呆れ返る刑事に、青年は悔しそうに口を引き締めると、

「……もう、それしか持ってなかったんです」

と言って、わあっ、と泣き出した。
(318文字)

『札(さーつ)』
 [音]サツ(漢) [訓]ふだ さね
 [学習漢字]4年
〈サツ〉1 文字を書いた板切れ。「表札・門札」
    2 書き付け。証文。手紙。「一札・鑑札・書札・入札」
    3 紙幣。「贋札(がんさつ・にせさつ)」
    4 切符。「改札・出札」
〈ふだ〉「名札・荷札」[名のり]ぬさ

(大辞林より引用)

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