私的国語辞典~二文字言葉とその例文~ セレクション79『下駄(げた)』
セレクション79『下駄(げた)』(433文字)
「――なあ、これでいいか」
クリスマスイヴも真っ只中の午後9時半。
サンタの格好をして彼女の家に行きたいと言う高橋の願いを叶えるべく、俺が探し回って購入し、俺が高橋の部屋まで持って来たサンタ服に着替えるために、わざわざ洗面所に向かった高橋が声をかけてきたので、俺は漫画を読むのをやめ、顔を上げた。
「なんだよ、おせえよ!やっと着替えた――」
俺が固まってるのを見て、高橋が口を尖らせる。
「何だよ、カッコイイだろ?」
「カッコイイ……ってお前、」
俺はどう返してよいか解らないまま、改めて高橋の姿を観察する。
赤いサンタ帽、白く豊かなつけひげ、赤いサンタ服の上着と、まあここまではいい。
「なのに、なんで下はジャージと下駄なんだよ!」
「うるせ!カッコイイからじゃねえか!」
「どこがよ。わかんねえよそのセンス!」
畳み掛ける俺に見せ付けるように、盛大なため息をつく高橋。
「――お前さ、」
「なんだよ」
「お前、下駄を馬鹿にすんなよ」
「馬鹿にしてんのは下駄じゃねえよ」
私は即座に切り返すと、頭を抱えてうずくまった。
(435文字)
『下駄(げーた)』
1 木をくりぬき、歯を作りつけにし、台部に三つの穴をあけて鼻緒をすげた履物。歯はふつう2本で、別の材を差し込むものもある。
2 活字印刷の校正刷りで、必要な活字がないときに活字を裏返して入れる伏せ字。下駄の歯のような形「〓」をしている。伏せ字。
(大辞林より引用)
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