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【過去作発掘】『復活の儀式』+『更なる復活の儀式』【即興小説】

ども、ならざきです。
ゴールデンウィークに入って自分の部屋の片づけをしてたんですが、そのついでに古巣であるmixiの日記も整理してまして。
そこでまだnoteにアップしていない作品をいくつか見つけましたので、これを機会に放出していこうと思います。

今回の作品は、pixivで以前参加していた『オリジナル小説を書きたい』というコミュ2013年の初夏に行われた『即興小説コンテスト』という企画――まあ要するに、指定時間にチャットに言って、そこでお題を提示されて、そのお題をもとに30分で小説を書いてアップし、その後30分で参加者の作品を読んで投票、優勝者を決定する、という超短期企画に参加したときのものです。

ちなみにその時の結果は、……10人中、9番目でした(^_^;)
いやあ、他の人ハンパない完成度なんですもん、びっくりでしたよ。ジャンルもバリエーションも様々でしたけど、ネタの作り方から何からほんとすごくて。いやはや、世界は広いわ、と痛感した2時間でしたってか30分で書ききるって、こんなにせわしないもんだとは思いませんでした。

というわけで。
その後にテンションが下がらなくて書いた続きと合わせてアップいたしますので、......まあ良ければ読んでやっておくんなまし(^o^)


『復活の儀式』
(即興小説コンテスト 初夏 参加作品) 

お題:以下の古代文明のいずれかをモティーフにして小説を書く
A、古代エジプト文明 B、古代ギリシア文明 C、古代中国文明
制限時間:45分


「はっはっは、とうとう手に入れたぞ、三種の神器を!」

 洞窟の奥深くに作られた謎の神殿風建築物をバックに、武田が高笑いとともに両手を掲げる。洞窟の中は松明で照らされていたが彼の手元までははっきりと見ることが出来ず、彼が本当に三種の神器を掲げているかどうかはわからない。

「くそ、もう少し早くたどり着けていれば」

 思わず漏れた私のつぶやきに、隣に立つショウコがしょげた声で返してくる。

「ごめん、あの時私があそこで立ち止まらなかったら……」
「いいよ、もう。私だってあんな所で伝説のアシナガスズメウサギを見かけたら、そりゃあ『きゃあかわいいっ』ってなるもの」

 私が思ってもないことを口にすると、ショウコはほっと息を吐いて背筋を伸ばした。

「そうよね、あんな可愛い生き物見たら、誰だって立ち止まるよね?」

 急に明るい口調になって尋ねてくるショウコに、私は返す言葉が思いつかない。

「ね、そうでしょアケミ、そうだって言ってよ、ねえ」
「うるさいわお前ら! 俺を無視するな!」

 ショウコの畳み掛けを遮るように武田の叫びが飛んできて、私はキッ、と武田を睨む。

「うるさいのはあんたよ、武田!」
「そうよそうよ、私たちは今、あんたどころじゃないの!」

 私に続いて怒鳴り返すショウコにどうツッコミを入れるかためらっていると、武田はとうとう我慢できなくなったのか、だまらっしゃい!とどこかの老人のような怒声を上げて掲げた両手を前に持っていく。

 ――まずい。

武田の前にあるのは、神器を収める『神の陶器』じゃないか。

「や、やめなさい!それを中に入れたら、あの文明が復活しちゃうじゃないの!」

 思わず叫んだ私に、武田がさも当然だと言わんばかりの表情で「今さら何を言ってる」と一笑する。

「私が生を受けてから20年。ようやく生来の願いが達成されようとしているんだ。邪魔をするんじゃない」
「ってかあんたまだ二十歳だったの?! どう見ても40代――」
「だまらっしゃい!」

 武田はショウコのツッコミを切り捨てると、両手に持っていた三種の神器を1つずつ『神の陶器』の中へと入れていく。
 まずは丸い皿のようなもの。次にゴツゴツした無骨な剣のようなもの。

そして最後に入れたのは、伝説の『古代粟』の束だった。

「いいから見ておけ、古代中国文明の復活の瞬間を!」

 武田は高笑いを続けながら、神器を入れた陶器を持ち上げる。

「よみがえれ!裴李崗文化よ!世界から争いをなくすのだ!」

 彼がそう叫んだ瞬間、陶器から激しい光がわき出し、世界はその光りに包まれたのだ。

それから、世界は大きくその様相を変化させた。
文明は大きく後退し、すべての移動手段や通信手段が姿を消した。
全世界で宗教が消え、代わりに『平等主義』が世界を席巻した。
人間は例外なく粟と豚だけしか口にできなくなり、他の食物には一切手を触れることをせず、結果世界に動物たちが溢れかえることになり――。

 そして、私とショウコは、大量に繁殖したアシナガスズメウサギとともに、平和に暮らしましたとさ。

(了)



【即興小説コンテストEX】
『更なる復活の儀式』【おまけ】


「ほおっほっほ、とうとう手に入れたわ、三種の神器!」

 苔むした洞窟の奥深くに作られた謎の神殿風建築物をバックに、一人の女性が高笑いをあげて両手を掲げている。洞窟の中は松明で照らされていて、神殿風建築物がその姿をおぼろげに浮かばせているが、彼女の手元までははっきりと見ることが出来ず、彼女が何を掲げているかどうかはわからない。

「おのれ、もう少し早くたどり着けていれば」

 思わず漏れた俺のつぶやきに、隣に立つショウコがしょげた声で返してくる。

「ごめんねえ。あの時私があそこで立ち止まらなかったら……」
「ああそうだよあんたのせいだよ。せっかくあと少しであのクソ女に追いつくってタイミングで、『きゃあかわいいっ』はないだろう。しかもあんた、アシナガススメウサギなんてそこら辺にうじゃうじゃ湧いてるだろが」

 俺が思ったまま罵倒しまくると、ショウコは泣くどころかムカツイたらしく、背筋を伸ばしてこちらを睨みつける。

「なによ、あんな可愛い生き物見たら、誰だって立ち止まるわよ、ジョーシキよジョーシキ!」

 ばっかじゃないの、と明らかに小馬鹿にしたような口調で詰め寄るショウコに、俺はなんて言い返して良いかさっぱり思いつかない。

「ね、そうでしょアケミ、そうだって言ってよ、ねえ」
「うるさいショウコ!空気読みなさいよクウキ!」

 突然話を振ってきたショウコに、高笑いを続けていた女性がぶっちゃけて怒鳴り返し、その金切り声に俺はキッ、とアケミを睨む。

「うるさいのはお前だよ、アケミ! だから女のヒステリーは――」
「そうよそうよ、クウキを読むのはあなたの方よ!」

 俺に続いて怒鳴り返すショウコにどうツッコミを入れるかためらっていると、アケミはとうとう我慢できなくなったのか、ええいおだまり!とどこかのドロンジョのような怒声を上げて、掲げた両手を前に持っていく。

 ――まずい。アケミの前にあるのは、神器を収める『ラーチアの器』じゃないか。

「や、やめろ!それを中に入れたら、あの悲劇が再現されるじゃないか!」

 思わず叫んだ俺に、アケミがさも当然だと言わんばかりの表情で「今さら何を?」と一笑する。

「あんたがやらかした儀式のせいで世界が変になってから5年。ようやくあのクソウサギのモフモフ地獄から開放されるんだ、邪魔をするんじゃないわよ」
「ええ?! アケミだってアシナガススメウサギかわいいって言って――」
「ええいおだまり!」

 アケミはショウコのツッコミをバッサリと切り捨てると、両手に持っていた三種の神器を1つずつ『ラーチアの器』の中へと入れていく。
 まずは石の打楽器、磬。
 次に、模様も何もないボロボロの土器。
 そして最後に入れたのは、世界最古の麺と言われる伝説の『粟麺』の塊だった。

「いいから見てなさい、この麺が持つ中国四千年の歴史の重みを!」

 アケミは叫び声とともに高笑いを上げながら、ゆっくりと器を持ち上げる。

「よみがえれ!ラーチアの悲劇よ!この世界を綺麗に洗い流しちゃいなさい!」

 彼女がそう叫んだ瞬間、陶器から激しい光がわき出し、激しい地鳴りとともに洞窟が揺れ始めた。

そして、世界は終焉を迎えた。
ラーチア――アジアのポンペイと呼ばれた古代の集落『喇家(ラーチア)』を全滅させた壮絶な激流がすべての大陸を飲み込んだのだ。


それから数週間後。
地球上に存在していたすべての物は、深い海の底へと沈んでいた。

既に打ち捨てられていた旧時代のテクノロジーも、粟と豚しか食さず、のほほんと農作業にいそしんでいた全世界の人類も、繁殖に繁殖を重ねて増えまくっていた動物たちも、アケミやショウコ、武田すらも、

そして、5年間で一億匹にも繁殖していたアシナガススメウサギもまた、モフモフとした体毛をイソギンチャクのように揺らしながら、海の底に沈んでいた。

めでたしめでたし。

(了) 


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