私的国語辞典~二文字言葉とその例文~ セレクション102『根(こん)』
作者駐:
『私的国語辞典』は全文無料で閲覧が可能です。ただ、これらは基本『例文』となっておりますので、そのほとんどが未完となっています。
基本的にそれらの『例文』は続きを書かないつもりではおりますが、もしどうしても続きが気になる方は、投げ銭して戴ければ有料部分に続きを執筆いたしますので、よろしくお願いいたします。
セレクション102『根(こん)』(410文字)
「まだ起きてたの?」
突然背後から声をかけられて慌てて振り向くと、そこには呆れ顔の母親の姿があった。
「なんだ、母さんか」
僕の驚き混じりの声に、なんだじゃないわよ、と返す母。
「もう3時じゃないの。試験開始が9時だから、そろそろ7時には起きないと駄目だ、って言ったのは和也、あなたなんだからね」
母の見事なツッコミに、僕はポリポリと頭をかく。
「いやその、なんか落ち着かなくてさ」
僕の返事に、まあ一週間前だからね、仕方ないか、と母が苦笑いする。
「根気が有るのは良いことだけど、根を詰めすぎるのは良くないからね」
解った?と尋ねる母に僕が解った、と返すと、母はにっこり笑って、ホットミルク作って来るから、と歩き去る。
僕は母の消えた部屋の入口を見つめながら、ふと今日が21日だったことを思い出す。
「知ってたかい?母さん」
僕は一人呟きながら、机に拡げていた営業企画書を脇に置いていた旅行鞄に詰め込んだ。
「今日は、母さんの13回忌なんだよ」
(410文字)
『根(こーん)』
1 物事に飽きずに耐えうる力。気力。根気。「精も―もつきはてる」
2 《(梵)indriyaの訳。機関・能力の意》仏語。作用を起こす力。生命活動や感覚の原動力。感覚のもとになる眼・耳・鼻・舌・身を五根、それに思惟を起こさせる意を加えて六根という。
3
㋐方程式を成立させる未知数の値。
㋑ある数を何乗かした数に対するもとの数。「平方―」
4 イオンになりやすい基(き)。硫酸根(SO4)など。 根を詰める 一つの物事を、精神を集中させて、続けて行う。 「―・めて仕事をする」
(大辞林より引用)
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