私的国語辞典_表紙絵2

私的国語辞典~二文字言葉とその例文~ セレクション101『これ(これ)』

前項目次:次項

作者駐:
 『私的国語辞典』は全文無料で閲覧が可能です。ただ、これらは基本『例文』となっておりますので、そのほとんどが未完となっています。
 基本的にそれらの『例文』は続きを書かないつもりではおりますが、もしどうしても続きが気になる方は、投げ銭して戴ければ有料部分に続きを執筆いたしますので、よろしくお願いいたします。
セレクション101『これ(これ)』(480文字)



「これは、なあに?」 

私の問いに、彼がびくり、と身体を震わせる。 

「え、ええと、お詫びのつもりで」 
「お詫び?」 

私の声に再び身体を震わせる彼。 

「あんたねえ、自分が何をしたのか解ってるの?」 

私の詰問に、彼はただでさえ小さな身体を更に小さく縮こませる。 
その様子を見て少し気の毒には感じたが、ここで甘い顔はできない。 

「謝らなきゃいけないのは、私じゃないでしょう?」 

私が畳み掛けると、彼はこくん、と無言で頷く。 

「じゃあ聞くよ?昨日あなたは何をしたの?」 

私の問いに、彼は下を向いたまま、 

「僕は昨日、授業をサボって校庭で雪遊びしてました」 

「――で?」 

更に追求する私。 

「テンション上がってバンツ一枚で走り回りました」 

「――で?」 

話を促すと、彼は俯いたままとつとつと話続ける。 

「昼から風邪を引いて、みんなにうつしました」 

「だから今日は学級閉鎖になったんだよね?」 
「はい」 

ぼつり、と頷く彼。そろそろかな。 

「なら、ごめんなさいは誰に言うの?」 
「みんなに」 

やっと解ったか。 

「解ったならよし。ならこれ、持って帰りなさい」 

私はため息とともに微笑みながら、机の上に置かれた

蛇の抜け殻

を彼に手渡した。 

(480文字) 

これ(こーれ)
[代]
 1 近称の指示代名詞。
  ㋐話し手が持っている物、または、話し手のそばにある物をさす。このもの。「―は父の形見の品です」「―を片付けてください」
  ㋑話し手が、いま話題にしたばかりの事物などをさす。このこと。このもの。「全世界の平和。―が私の切なる願いだ」
  ㋒話し手が当面している事柄をさす。このこと。「―を仕上げてから食事にしよう」「―は困ったことだ」
  ㋓話し手の現にいる場所をさす。ここ。「―へどうぞ」
  ㋔話し手が存在している時をさす。今。「―から出かけるところです」
  ㋕話し手のすぐそばにいる親しい人をさす。現代では多く、自分の身内をいう。「―が僕のフィアンセです」
  ㋖《漢文の「之」「是」などの訓読から》判断の対象を強調してさす。「…とは―いかに」「―すなわち」
 2 一人称の人代名詞。話し手が自分自身をさす。わたし。
  「―は河内の国交野郡(かたのごほり)、禁野の雉領にすまひする者でござある」〈虎清狂・禁野〉

(大辞林より引用)

#ならざきむつろの私的国語辞典

ここから先は

0字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?