私的国語辞典_表紙絵2

私的国語辞典~二文字言葉とその例文~ セレクション100『凝り(こり)』

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作者駐:
 『私的国語辞典』は全文無料で閲覧が可能です。ただ、これらは基本『例文』となっておりますので、そのほとんどが未完となっています
 基本的にそれらの『例文』は続きを書かないつもりではおりますが、もしどうしても続きが気になる方は、投げ銭して戴ければ有料部分に続きを執筆いたしますので、よろしくお願いいたします。
セレクション100『凝り(こり)』(426文字)


「私、肩凝りが酷くてさあ」 

夕食後、珈琲を片手に反対の手で肩を揉む冴子に、僕は苦笑いしながらそうだね、と返した。 

「そんなに重いものついてりゃあ、肩も凝るよ」 

僕の答えに彼女は目を下に向け、エッチ、と呟いた。 

「まったく男って、仕方ないなあ」 

彼女は呆れ顔で正面に座る僕を見る。 
僕は一瞬否定しようとするが、じゃあ何の事かと説明することもできなかったので、苦笑したまま珈琲を一口飲んだ。 



そうだ。 
誰にだって秘密はあるんだ。 


僕が幽霊の見える体質だって事も、 
それ故に知ってしまった彼女の過去も、 



そして、『それ』込みで僕が彼女を愛してる事も。 


「――冴子、」 

僕はカップを置いて彼女を見つめる。 

「ん?なに?」 

彼女はいつもの悲しげな瞳で、僕を優しく見ている。 

「結婚、しないか」 

僕の言葉に彼女はびくり、と身体を震わせる。 
僕は微笑みながら、彼女の凝っているであろう肩を見る。 

僕の視線に気づいたのだろうか。 
彼女の肩におぶさっていた二人の赤ちゃんが、
幸せそうに柔らかな笑みを浮かべていた。 

(426文字) 

『凝り(こり)』
1 筋肉がかたくなってその部分が重く感じられること。
 「肩の―」「―をほぐす」
2 一つの物事に熱中すること。「―性(しょう)」
3 凝結すること。
「夕―の霜置きにけり朝戸出にいたくし踏みて人に知らゆな」〈万・二六九二〉

(大辞林より引用)

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