私的国語辞典~二文字言葉とその例文~ セレクション24『桶(おけ)』
セレクション24『桶(おけ)』
寝起きのボンヤリとした意識の中裏庭に下りた私は、時折鶯が鳴く朝の雰囲気を愉しみつつ井戸に近づくと、手押しポンプのハンドルを握り、手桶を蛇口の下に置いて、ゆっくりとハンドルを動かしはじめる。
始めのうちは少し赤みがかっていた井戸水が次第に澄んだものに変わっていき、朝のひやり、とした空気と一体化していく。
手桶の中に澄んだ水が溜まるのを確認した私はハンドルから手を離して、そっと両手を入れる。
刺すような冷たさが手から脳の奥底まで一気に走り抜けた瞬間、私は朝と一体になった錯覚を覚えて、思わずぶるり、と身体を震わせた。
(255文字)
『桶(おーけ)』
《2が原義》
1 (桶)細長い板を縦に円形に並べて底をつけ、たがで締めた筒形の容器。「手―」「洗い―」
2 (麻笥)紡いだ麻糸を入れる容器。檜(ひのき)の薄板を曲げて作る。
「娘子(をとめ)らが―に垂れたる続麻(うみを)なす長門の浦に」〈万・三二四三〉
(大辞林より引用)
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