私的国語辞典_表紙絵2

私的国語辞典~二文字言葉とその例文~ セレクション67『靴(くつ)』



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セレクション67『靴(くつ)』(319文字)



                                             

                                                                          

私は、靴だ。 
右足用のスニーカーだ。 

何故私がこんな深夜の駐車場にぽつんと佇んでいるかは、
私にも良く解らない。 

いつも一緒だった相方の姿も見当たらない。 
ご主人も遥か数時間前に見たきり姿を見せない。 

途方に暮れた私は何とは無しに空を見上げる。 

空は快晴、 
満天の星空に大きな月が静かに私を照らしている。 

もしあの月がゆっくりと降りてきて、私に話し掛けてきたら、
私はなんて答えるだろうか。 

月と楽しくお話してたら、あの沢山の星達に嫉妬されるかな。 
いや、もしかしたら、星も降りてきて話し掛けてくれるかも。 
そして夜明けが来て、私はみんなと一緒に空に上るんだ。 

私はその思いつきの素晴らしさに、飛び上がらんばかりに喜んだ。 

まあ、靴だから飛び上がれなかったんだけどね。 

(319文字) 

『靴(くーつ)』
 足を覆うように作った履物の総称。革・人造皮革・ゴム・ビニール・布などを材料とし、用途に応じて種々のものがある。古くは、烏皮(くりかわ)の履・浅沓(あさぐつ)・糸鞋(しがい)・麻沓(おぐつ)・錦鞋(きんかい)など、革・木・絹糸・麻・錦・藁(わら)などで作った。

(大辞林より引用)

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