私的国語辞典_表紙絵2

私的国語辞典~二文字言葉とその例文~ セレクション33『風(かぜ)』

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セレクション33『風(かぜ)』


私は風だ。
人間の中には自由の象徴のように思っている者も居るらしいが、それはとんでもない思い違いだ。
当然私以外にも沢山の風達が居て、自分勝手に流れていこうと思ったら、彼等との力勝負に勝たねばならないからだ。
まだ相手が『そよ風』や『つむじ風』ならいい。
もし進行方向に居るのが徒党を組んで暴れ回る『低気圧』や『台風』ならば、私はあっさり負けて彼等に迎合するしかない。
私達の世界も力が正義、人間の言う『弱肉強食』の世界なのだ。

しかしそんな私でも、唯一の楽しみがある。
下に居る人間をすり抜ける瞬間に彼等が見せる涼しげな表情、力の強い風達では与える事の出来ない『感謝』という感情を手に入れる楽しみだ。
これがある限り、私は流れ続ける。

さあ、今日はどっちに行こうか。


(325文字)

『風(かーぜ)』
[名]
 1 空気のほぼ水平方向の運動。風向と風速で動きを表す。山谷風・海陸風のような小規模のものから、中規模の季節風、大規模な偏西風・貿易風などがある。「―が吹く」「涼しい―に当たる」「テントが―をはらむ」
 2 その身に感じられる人々のようす。「浮世の―は冷たい」「娑婆(しゃば)の―」
 3 寄席芸人用語で、扇子のこと。
 4 (多く「風邪」と書く)鼻・のど・気管などのカタル性炎症。くしゃみ・鼻水・鼻詰まり・のどの痛み・咳(せき)・痰(たん)や発熱・頭痛・倦怠感(けんたいかん)などの症状がみられ、かぜ症候群ともいう。感冒。ふうじゃ。「―をひく」《季 冬》「縁談や巷(ちまた)に―の猛(たけ)りつつ/草田男」
 5 風習。習わし。
「久方の月の桂も折るばかり家の―をも吹かせてしかな」〈拾遺・雑上〉
[接尾]
 名詞に付いて、そぶり、ようす、わざとらしい態度などの意を表す。「先輩―を吹かす」「臆病―に吹かれる」

(大辞林より引用)

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