私的国語辞典_表紙絵2

私的国語辞典~二文字言葉とその例文~ セレクション50『気障(きざ)』



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セレクション50『気障(きざ)』


                                                                                                      


夜。
明かりを着けないリビングで、彼は一人窓の外に広がる夜景を眺めながら、両手で挟み込むようにして持ったグラスの中味を静かに口に含む。そんないかにも気障な姿が、彼にはとても似合う。
「ねえ」
私の声が聞こえないのか、彼はこちらを振り向こうとはしない。
「ねえ、ってば」

私は我慢できずに、彼の元へと走り寄り、彼を背中越しに抱きしめて……。

「わーっ、待ってちょっと待って~!そのおままごとストーップっ!」 

突然の乱入者。 

「乱入者って普通止めるわよこんなままごと」

ちっ。 

「ああ!我が娘に舌打ちされたっ!」

せっかくの既成事実を作るチャンスを。 

「既成……ってどこで覚えたのよそんな言葉」

昼のドラマ。 

「ああなるほど……じゃなくてっ!ほら、サクちゃんも嫌がってるじゃない」

彼もまんざらでもない様子。 

「ただミルク飲んでるだけじゃないの!」

まったく、愛する二人を邪魔するなんて、我が母親ながら恥ずかしい。 

「……ああもう分かったから、おやつにしますよ」


……。
……おやつ?

「ミスドの焼きド買ってきたから」

わーい。食べる~。 


(445文字)


『気障(きーざ)』
[名・形動]《「きざわ(気障)り」の略》
 1 服装や言動などが気どっていて嫌な感じをもたせること。また、そのさま。「―な話し方」
 2 気にかかること。心配なこと。また、そのさま。
  「化物が…顕れているのぢゃあねえかと思ふから、些(ちっ)と―なところがあらあな」〈滑・七偏人・五〉
 3 不快な感じを起こさせること。また、そのさま。
  「そのすうすうとすすり込む音が何分(なにぶん)―だ」〈滑・浮世風呂・四〉

(大辞林より引用)

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