私的国語辞典~二文字言葉とその例文~ セレクション43『鴨(かも)』
セレクション43『鴨(かも)』
『現場です。あの謎のウィルス大感染から1年、今日、毎年恒例となっている『鴨の親子の行進』が、今まさに始まろうとしています!』
レポーターはそこで一旦言葉を区切り、マイクを持っていない右手を伸ばした。
『現在、鴨の親子はまだ池の中に居るようですが、自衛隊による規制のため、これ以上は近づく事が出来ないため、ここからは親鴨の頭の一部しか見れません。また始まりましたらお伝えします!』
そして、スタジオのキャスター達にカメラが切り替わる。
「佐藤さん、ありがとうございました」
女性キャスターの挨拶の後、年配の男性キャスターが脇に座るコメンテーターに声をかけた。
「さて、武田さん、あの日本国内に甚大な被害を及ぼした『鴨ウィルス騒動』についてですが、現在もその原因となったウィルスの発生源が特定されて無いようですね」
男性キャスターの問いに苦笑いするコメンテーター。
「ウィルス自体は鳥インフルエンザの亜種だったようです。ただ、何故鳥インフルで鴨が巨大化して狂暴化したのかまでは、はっきりしたプロセスを解析中みたいですね」
「では、また発生する可能性も……?」
キャスターの問いに、コメンテーターが頷く。
「無い、とは言えませんね」
途端にざわつくスタジオ。
そこにレポーターの声が差し込まれた。
『……ました!動きました!』
すかさず映像が切り替わり、池から上がってきた巨大な鴨の頭部が勢い良く道路に向かって行った。
『現在、鴨の親が物凄いスピードで道路を横断しようとしています!あ!自衛隊の皆さんが麻酔銃を構えて、不測の自体に備えました!わあ凄い、子鴨達が、わたし位の背丈の鴨が5羽、これもまた恐ろしいスピードで駆け抜けて行きます!これはなんでしょう?!なんなんでしょう?!』
(770文字)
『鴨(かーも)』
1 カモ目カモ科の鳥のうち、ガン・ハクチョウ類以外の総称。中・小形の水鳥。先の丸い平らなくちばしをもち、指に水かきがある。一般に雄の羽色は派手で、雌は褐色。日本には秋に渡ってきてつがいをつくり、春に北方の繁殖地に戻るものが多い。マガモ・コガモ・オナガガモや留鳥のカルガモなどは水面で餌をとり、キンクロハジロなどは潜って餌をとる。かもどり。あしがも。《季 冬》「海くれて―の声ほのかに白し/芭蕉」
2 利用しやすい相手。負かしやすい相手。「いい―にされる」
(大辞林より引用)
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