見出し画像

教育は、プレイフルに、おもしろく!

 3回にわたるプレセッションを経て、2024年7月29日、土佐塾高等学校の教員研修に参加させていただく形で「プレイフル・ワークショップ」の本番を迎えた。

プレイフル・ワークショップのブローシャー

 プレセッションで感じたことは、これまでのnoteにまとめてあるので、良かったら読んでほしい。

 ブローシャーにあるように、本当ならば午後のみの予定が、プレセッションの中で上田先生から提案があり、午前中からカフェ的に集まろうということになった。さらに、急きょ当日になり、10時から上田先生の特別講義もあると連絡が入った。


 プレセッションでご一緒した広島の先生を車に乗せ、9時スタートなのに8時半には到着してしまった。県外のお客様をお連れするし、土佐塾高校に行くのは初めてだし、余裕を持とうとしたことは事実だが、早過ぎた(笑)。しかし夏の強い日差しが差し込む朝の教室は、どことなく盛り上がるムードに満ちていた。
 前日のプレセッションの余韻もあって朝から気分はプレイフル。気分のままに、午前の会場となる教室の黒板に絵を描いた。黒板はあまり使われていないのか、チョーク箱には小さくなったチョークしかなかった。しかしそれが、私のお絵描きを自由にしたように思う。

三条まいさんのお写真拝借

 少しずつ、全国各地から参加者が集まり始め、いろいろな地域のお土産がカフェコーナーに陳列されていく。コーヒー豆をひく音と匂いも漂い始め、いよいよカフェの雰囲気。それぞれが名刺交換や自己紹介をしながら、ゆるく場をあたためはじめた。


モーニング・セッション:特別講義

 予定の10時を少し過ぎ、お待ちかねの上田先生の講義がスタート。最初に、1983年に学生たちがコンピューターを演じた動画を見た。フロッピー役の学生がコンピューターに入るところから動画はスタートした。

 合宿形式で30時間も延々とコンピューターのパーツ役を演じていると、エンジニアではない学生たちも、少なくとも自分の演じた役割だけは、その改善点がわかるようになるという。演じることは学びであり、教育にはこのような圧倒的な体験が必要だと、上田先生は語った。

みなさん、夢中で上田先生の話を聞いていた

 しかし、圧倒的な体験だけでは学びにならない。大切なのは、振り返って言語化することだと上田先生は続けた。別のタイミングで上田先生が話されたドナルド・ショーンの省察的実践家(Reflective Practitioner)のお話は、私の中ではこの動画や講義とつながった。

 ショーンは省察的実践において、行為の中の省察(reflection-in-action)と行為についての省察(reflection-on-action)を大切に、と説いている。

 もう少しライトに読むならこちら。むしろ、後述するノールズの成人学習論(アンドラゴジー、ペダゴジー)なども解説があるのでお得かも!?


 また、「Immunity to Change」のお話も印象的だった。私はまだ知らなかったので必死でXにメモしていたのだが、後から調べると、ロバート・キーガンの本のタイトルだった(そうおっしゃっていたが、知らなかったのでその場ではつながらなかった)。


 ほかにも、ヴィゴツキー(発達の際近接領域)、キャロル・ドゥエック(グロース・マインドセット)、ブルーナー(構成理論)、ノールズ(アンドラゴジー)など、さまざまな理論家や理論の話が盛りだくさんの講義だった。しかし、理論の話はあくまでさりげなく、それよりも具体的な上田先生の体験談が心に残る講義だった。例えば、上田先生に大きな影響を与えたセサミ・ストリートの上田先生ストーリーも素晴らしかった。

 しかし、さらに私の心を打ったのは、貧困による教育格差を救う音楽と映像を使った幼児教育のお話。街の中にさりげなく存在する文字にフォーカスした映像に、美しいメロディが合わさることで、楽しみながら識字率を上げていく取り組みだ。これはまさにヴィゴツキーの発達の際近接領域。メディアによって、子どもの「支援があればできること」の幅を大きく広げる可能性がある。アートと学びの融合を感じた。


本編:プレイフル・ワークショップ

 午後の部は場所を変えて、なんと廊下での実践。廊下といってもとても広くて、素敵。

 午前の部でカフェスペースにPoints of You®︎のカードを置いていたところ、上田先生が気にかけてくださり、さまざまなツールの中からパンクタムの質問カードを本番セッションで使おう、と提案してくださった。
 使う目的をなんとなくディスカッションして、「あとは谷口さんの好きなように〜」という、まさに脱予定調和な感じに。ちなみに、午前の参加者と午後からの参加者の熱量の差を埋めるために使った。

私たちのチームの質問カードたち

 午後の部は、とにかくフロー状態を楽しみたくて、ほとんどXを使っていない。ちなみに、今回上田先生のお話にはチクセントミハイのフロー理論は出てこなかったと記憶するが(上田先生のワークショップはフローになるようにできていると思うが)、個人的に大好きな理論である。

 実際に、とにかくフロー状態だったため、ケータイのカメラに残っていることしか覚えていない。でも、それでいいのだ。ちなみにカメラには、本気で「愛の讃歌」を熱唱する2名の男性教員の動画が残っているが、私の胸に秘めておこうと思う(笑)。


 上田先生のワークショップのメインは、なんといってもレゴタワー!私にとっては2016年、2023年に次いで、1年ぶり3回目となる。

2016年5月17日、HRカンファレンスにて
2023年8月6日、ドラムサークル for ティーチャーズにて

 上田先生は毎回、場に合ったメッセージを発信している。今回は会場の特性的に天井の梁が"ゴール"となり、必然的にすべてのチームが"ゴール"を目指せる状況だった。早くできるチームもあれば、何度も崩れては立て直す必要に迫られるチームもあった。

 途中から、なぜか上田先生からマイクを託され、終わって休んでいる方々の巻き込みや、まだがんばっている人たちへの声援を夢中でやった。

 ここで、午前の部で上田先生がお話しされたアンドラゴジーが頭をよぎる(ちなみに、ここで書いている理論は何も、現場で常に考えていたわけではない。reflection-on-action、つまり今ここにアウトプットしていることによってつながっている)。

 アンドラゴジーは大人の学習であり、主体的かつ冒険的な学びである。他方、ペダゴジーは決められたカリキュラムを、決められた方法で、合格を得るための学びである。一部の大人たちがレゴを"ゴール"まで到達させたことで満足している状態は、私にはペダゴジー的に映った。


 ここで私は、だんだんと自分の内面が、悪いループに陥っていることに気づく。ペダゴジー的に勝手に見ているのは私で、本当のところは聞いてみなければわからない。それなのに、その方々を心の中でペダゴジーと決めつけ、巻き込むという自分のゴールに引きずり込もうとしていた。このときの私こそが、ペダゴジーである。そんな自分に気づいたとき、そういう気持ちが薄まるまで、マイクで声をかけるのをやめた(これはreflection-in-actionで良いだろうか)。

 気持ちを切り替え、何度レゴが崩れてもがんばるチームに意識を向けた。上田先生は崩れても崩れても「大丈夫、大丈夫」「やり直せばいいだけ」と柔らかい声をかけ続けていた。そんな声もまた、気持ちがかたくなっていく自分に気づかせてくれたのかもしれない。

ようやく完成したこの笑顔、上田先生の表情、周囲の祝福。これがすべて。
(Grant愛ちゃん撮影の写真を拝借)


 最後は、プロモーション・ビデオの撮影。ん、サングラス持参?PV?何をするの???と、誰もが当日まで思っていた。でも、チーム一丸となって作るPVは楽しくて楽しくて、もう1回やりたいくらいだった。


感動のラップアップ・セッション

 ラップアップ・セッションは、教室で。プレセッションで見たレディ・ガガの受賞シーンが、あのときよりも強く胸に響いた。1分足らずの動画なので、どうかクリックして見てほしい。

 

 最後は、上田先生のオリジナルソングをみんなで。周りの大人たち、みんなウルウルしていたよ。体験したから響いてくる、体験したから理解できる、体験したから次に進める。そう、すべては「体験したから」。

Grant愛ちゃんのお写真拝借


 プレイフルで、フローな時間は、あっという間に過ぎていく。戸惑っていることなんて、やっているうちにすぐに忘れて夢中になって、誰かと何かを創るって、こんなに楽しい!
 午前中の講義で学んだコレが、このプレイフル・ワークショップにはちゃんと織り込まれていた。私たちは知らない間にステージに出ていたし、オーディエンスの目線を感じる時間もあった。そこから感じることが、たくさんあった。


 さあ、今度は私が仕掛ける番。後期の授業の内容を一新して、早くこの授業をやりたいってワクワクしている。このプレイフルな1日に、ご一緒した皆さんに、誘ってくれた友人に、そして上田先生とそのチームの皆さんに、感謝をこめて。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?