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-シャッター音- という身だしなみ。

周知のように、国際的に見て日本はiPhoneユーザー比率が非常に高いです。私も数年前までは類にもれずだったのですが、3年ほど前からAndroidのスマートフォンを利用しています。

・Appleが頑なにLightningケーブルを採用する姿勢
・同社のプロダクト開発そのものへの熱量を感じられなくなった
・移行時期のGoogleのプロダクトデザインの佇まいに惹かれPixel5を手にした
など移行した要因は様々あるのですが、カメラ撮影時のシャッター音についても、OS移行してよかったと感じられる一因でした。

特に、今私が使用しているNothing Phone(1)はシャッター音に魅力が詰まっています。

Nothing Phone(1)は、2022年にイギリスのデジタルハードウェアベンチャーが初めてリリースしたスマートフォンです。透明な背面ガラス越しに見える全パーツ同色塗装で統一された内部構造を魅せるスタイリングによって、Y2K時代のiMacデザイン言語をどこか彷彿とさせながらも現代的なプロダクトに昇華させています。またその物珍しいスタイリングに「キャラ負け」しない独自OSによるユーザー体験は、所有する&使用する気持ちを一貫して高揚させてくれます。

特に、日頃の着信、通知、シャッターに至るまで一貫してピコピコ系の電子音を発する点は、そのプロダクトのわかりやすい個性のひとつでありながら、日常の相棒として「とても気が遣えるやつだな」と感じさせてくれます。

具体例を申し上げますと、私はホテルの企画開発業務に従事しており、調査シーンなどでスマートフォン撮影をする機会がとても多いのですが、同行する複数人で同時にシャッターを切るときのいかにもな「カシャッ」という音が立て続けに聞こえることに強い抵抗がありました。
周囲に配慮がないうえに、混ざることによりますます主張が強すぎる。

またプライベートシーンの一例でも、昨年参列した兄の結婚式にて全く同じ印象を持ちました。続けざまに聞こえる等しく無感情なシャッター音は、新郎新婦という主役をさておいて音自体が意味・象徴性を帯びているとすら感じてしまいます。

その点Nothing Phone(1)のシャッター音は、直感的に写真を撮っていることを感じせないピコピコ音を発するためか、先に記載したような抵抗感がとても薄いように感じます。普段私はデジタルカメラでも写真撮影をしますが、撮影行為に抵抗を感じることで切り取りたい一瞬を逃したときの後悔は筆舌し難く、Nothingのこのユーザー心理に対する配慮設計はとても心強いです。

そもそもとして、iPhone純正カメラアプリのシャッター音は古いキヤノン製カメラ実物のシャッター音を録音し、スピードを落としたものだそうです。
この音によって「今スマホで写真を撮っているよ」と普遍的に伝えやすいコミニュケーションを生み出しているものの、かつてカメラ機構から必然的に発せられていた物理音を、電子的に撮影するスマホにほぼそのままトレースするというのはある種のもったいなさを覚えます。

デジタルであることの意味・魅力を引き出すという発想もあってほしく、この視点において、自身がデジタル写真機であることをありのままに音体験に落とし込むNothing Phone(1)は潔いなと感じますし、本稿冒頭に記載した高揚感をもたらす一因として貢献しているように感じます。

スマホによっていつでも誰でもどこでもシャッターを切る世界になりました。
TPOに合わせて装いを変えるように、シャッター音も周辺への気遣いを欠かさず、でも自分自身が「アガる」ことも忘れない無形の身だしなみとして捉えてみると興味深いのではないでしょうか。

※余談ですが、私はAppleアンチ立場ではなく、日頃Macbook AirやiPad Proを愛用しています。本稿の主張を引き立てるような形でiPhoneを挙げてしまった点、不快に思われた方がいらっしゃったら申し訳有りません。


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