23.げにすさまじき、美への執着
ばあちゃんが92歳の時。
施設から一時帰宅中だった秋、デイサービスから戻ってきた後に、ニコニコ超〜ご機嫌だったことがありました。
「見て!」とばかりに、私に手の甲を向けてニコニコ。
「どしたん?」とその手を眺めると、爪にネイルが施してありました。
「なに、マニキュア塗ってもらったん?」
「うん、初めて♪」
さすが、夫の葬儀をした晩に「レーザーでシミ取りしに行かなくちゃ!」と宣った人です。
美に関しては、私よりキャッチーだと思います。
あまりにも嬉しそうなので、記念撮影してあげました。
こんなハッピーにしてもらえるならば、介護施設でのメイクボランティアは、『ボランティア』なんて言わず、施術してくれる方々にはきちんとお金を支払うべきです。
たぶん、うちのばあちゃんなら「1万円です」と価格提示されても、「じゃあ、いらね」と言わず、真っ先にネイルしてもらうと思います。
そのぐらいおしゃれが大好きな人でした。
我が母の話では、子供の食べるものがなくて、ひもじいと泣いていても、身だしなみにはお金をかけていたそうです。
確かに葬儀のメモリアルコーナーに飾る写真を探していたら、若い頃の社員旅行の写真はどれも、他の人が普段着っぽい中、1人だけきちんとした格好で写っていました。
また、化粧水も最後まで資生堂の「dプログラム」を使っていましたが、内緒?で教えてくれたことによれば、1本2万円の化粧水も使っていた…とか。
ばあちゃんが、そんな高額なものを使っていたのも驚きですが、片田舎のスーパーの化粧品売り場に、そんな高額な化粧品が置いてあったことも驚きでした。
化粧品購入もズッコケエピソードがあるので、またの機会にお話ししましょう。
祖母と孫のちょっといい話みたいなのをするとしたら、そろそろ危険だと連絡が来た後、お見舞いに行って、寝ているばあちゃんに化粧水をつけてあげたところ、うっとり嬉しそうにしていたことでしょうか。
最後に自宅で過ごした日も、動くのがやっとみたいな状況でしたが、朝のルーティンであった化粧水は忘れませんでした。
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