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7.哀しい誕生日ケーキ
父が電気工事士なこともあり、我が家は割とホーム家電導入が他の家より早かった。
電子レンジも壊れるまでは、初期も初期!
温めるだけの単機能、お皿も回らないものだった。
母は使うための講習会にも行ったらしい。
「あっためてる時は、目を悪くするから中の電気を見ちゃダメ!」
中を覗いてると、そう言われたが、もしかしたら『写真を撮られると魂抜かれる』に近い都市伝説だったのかな。
その電子レンジには、たとえるならちょっと高級主婦雑誌ぐらい分厚いレシピ本が付いていた。
私は見たことのない料理が並ぶその本を眺めるのが大好きだった。
そんな電子レンジ導入されたある日。
「今日はパパの誕生日だから、みんなでケーキ作るよ」
レシピ本に出ているケーキを、父の誕生日に作ってお祝いしようということになった。
母は果物やクリームだけでなく、スーパーでチョコスプレーやアラザンなどなどトッピング材料も買ってくれていた。
そして、電子レンジでリング型のケーキを作ってくれた。
チーン!
音がして、取り出したケーキは美味しそうな匂いがしていた。
「チョコが溶けちゃうから冷めたら飾るんだよ」
そう言われて、みんなで団扇であおいだりして、そわそわとケーキが冷めるのを待っていたが、そこは子どもだ。
「ママ〜、もういい〜?」
何べんも繰り返し聞き、挙句には待ちきれず、まだ粗熱が取れないうちにケーキを飾りだしてしまった。
「ただいま〜」
そこへ父の帰宅。
「あっ!パパだ!」
「おかえりなさ〜い」
誕生日だからか、いつもよりかなり早く帰宅した父にみんな嬉しいはず…が!
「なんだ!そらぁっっ!」
ケーキを見た父の一言で、瞬く間に修羅場となった。
粗熱が取れないうちに飾りだしたので、トッピングのチョコスプレーやアラザンが溶けて、クリームと混ざってしまい、見た目がスプラッタになってしまったのだ。
そのドロドロさ加減を見て、自分の誕生日なのに気味悪いものを出すなんて、失礼だと解釈したらしい。
そして、一度逆鱗に触れたら父の怒りはしばらく収まらない。
できあがった時、美味しそうにできたケーキはドロドロになってるし、父はずっと怒っているし、私たちはいきなり怒られてベソかいてるし、母は取りなすこともできずオロオロしてるし、そこからは先はもう記憶がない。
大好きなパパの誕生日だというのに、ワクワクした嬉しい気持ちもすべて台無しで終わってしまった。
翌日。
残っていたケーキは、美味しかったけれど、なんとなく哀しい味がした。
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