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自分の映画で映画泥棒の犯行現場に出くわした話。

私は、しがない20代アラサーの映画制作者です。
最近Twitter等で映画館でのマナーが話題になることが多いので、今日はこれを機に私が本当に体験したことを書こうと思います。
ことが起こったのは、すこーし前の、とある映画祭での出来事です。


【前提】
・著者はいわゆる「自主映画」を作っている人間(出演者ではありません)
・著者はメジャーな映画監督ではありませんが、職業はちゃんとした映像監督です。商業映画のプロデュースの補佐や、その他の技術的なことなども経験しています。
・「自主映画」というのは普通の映画館ではなかなか上映されません。なので、我々は各地の映画祭に作品を出品し、お客様に見て頂く機会を得る努力をしています。
・運が良ければ、映画祭で話題になった作品として、「自主映画」がその後劇場で公開される場合もあります。むしろ、我々自主映画制作者たちは、そういったものを足がかりににして、作品を劇場へと繋げたいと日々目をギラつかせています。


多くの方に読んで、考えていただきたいと思ったので、若干このお話の世界観を書かせてもらいました。
さて、話はここからです。


前述の通り、私は20代のとある映画制作者です。
大学で映画を専攻し、卒業後も数本自主制作で作品を作り、なんとかちゃんとした映画監督になりたい!映像を撮れる人間になりたい!と思い、数々の映画祭に作品を応募し、それなりに受賞を重ねてきました。
最近では、「劇場で公開されることを目標にした作品を作りたい!」と思い、自ら資金集めもして、ある程度名のある女優さん、俳優さんを起用して中編映画を作り、渋谷の劇場で少し上映させて頂いたりもしました。


そんな中、ある日、見つけてしまったんです。

とある映画祭で自分の作品が上映されている最中、偶然会場の後ろの方の席のお客様が、スマホをスクリーンに向けているのを……。



見つけた瞬間は、「これが噂の…!」という驚き・衝撃がかなり大きかったですが、しばらくじっと見ていて、その方が映画の撮影行為をやめる気配がなかったので、だんだんと怒りが湧いてきました。
私はこういう時、直接本人に「やめてください」と言ってしまえるタイプの人間なので正直後ろから肩を叩いて言ってやろうと思ったのですが、このトラブルを私一人の認識で終わらせてしまうのは良くない、と思い映画祭の方に状況をお伝えして、撮影していた方に止めて頂く用にお話していただきました。

注意して頂いた後は撮影行為は行われませんでした。
ちゃんと、上映が終わるまで少し離れた後ろの席から見ていました。
(エンドロールの最中に舞台袖に移動することが出来るので、最後までしっかり見ていましたよ)



「本当にこんなことが起こるんだ…」という衝撃は今でも忘れられません。
見つけたのが私だったというのも、不幸中の幸いかもしれません。

だって、その方がいくつものシーンを撮影していた、その方が(おそらく)大好きなキャストさんが、その現場を見たわけではないのですから…。



スクリーンを撮影していた方からしてみれば、あくまでも自分の鑑賞用として記録したにすぎないかもしれません。
プライベートな目的だからいいじゃん、と思われるかもしれません。
そういう問題ではないんです。
我々の考えからすれば、「好きなキャストが出ているから何度も見たい」ということはつまり、その作品は本来それだけの「価値」がある作品ということになるのです。

「価値」とは何か。
「価値=お金」です。
エンターテイメントの人間、ものを作る人間みんな、その「価値」を得て生きていますし、こういった世界の人間でなくとも、いわゆる会社員だとしても、みんな「価値」を得て生きています。

説教くさい話は面倒臭いので置いておきます。

つまり私が言いたいのは、「好きなキャストが出ているから何度も見たい」という気持ちは嬉しいのですが、自分の手元のスマホで簡単にいつでも見れるようにしてしまう行為というのは、イコールそのキャストさんや作品の「価値」を下げてしまう行為だと思うのです。
「大切な作品ではない」と言っているのと同じだと思います。
好きなのに、好きな相手に対して、なんだか可哀相なことをしていますね。

例えば、本当に本当にその方がそのキャストさんのことを大好きだとして、純粋にプライベートな目的で撮影をされていたとしても、だったら上映後に私にそれを伝えて「DVDにしてください!」でも「もっと見たいです!」でもなんでもいいから伝えてくれれば、もっと他に見せる手段を講じたと思います。
Twitterの感想でもいい。なんでも。

事実、この作品を世に広まることを応援してくださる方は結構たくさんいまして、3/12にはDVDの発売が実現します。
想いを伝えてくれれば、こういうことは実際に起こるんです。
実現するんです。
あるいはその後、場合によってはその作品が劇場でかかるようになったりすることもあるんです。(この作品の場合は実現しませんでしたが…)



それがもし仮に、作品を撮影した映像がネット上に流出してしまったらどうなるか。


感情論は抜きにして。
劇場公開前の作品だとしたら、必然的に劇場で公開した時に見てくれるお客様の数は減ります。
DVD化前の作品だとしたら、DVDを購入してくださるお客様の数は減ります。


そうなると。
我々は、次回作の製作資金が得られなくなり、映画を作れなくなります。
単純で明快ですね。


そうなると?
例えば、その監督さんが映画を作り続けることを諦めてしまいます。
例えば、その女優さんや俳優さんが「自分には魅力・実力がない」と思って志半ばに引退してしまいます。
例えば、大きな話で言えば映画を製作している会社が資金を集められなくなり潰れてしまいます。あるいは映画産業から離れてしまいます。


よく言われる話ですが、実際、映画はお金になりません。
「好きだから」「映画だから」という思いだけで、なんとか成り立っている世界です。(特に日本は)
これは本当に本当に死活問題で、ここ最近では若い世代も上の世代も「なんとかせにゃならん」と言って改善させようと必死になっていることです。

でもなかなか、状況は良くなりません。
「最低賃金」なんて言葉、この世界には存在しませんからね。



また面倒なこと書いてしまった。。


あと1つ、そうしてもし仮に作品がネット上に一度でも流出してしまったら、その作品は何度でも不正にコピーを繰り返されることになります。
最初の不正アカウントが消されたとしても、消される前にコピーが作られ、また別のどこかで公開されてしまいます。
その広がりはもう我々には止めることができません。
一度の流出が、大惨事を生んでしまうのです。
「そんなつもりじゃなかった」は、通用しないのです。
(そもそも法的にアウトな行為ですからね)


さておき、劇場での撮影行為は、上記のような問題も生みますが、何より、その作品に関わった全ての人を悲しませる行為です。

我々制作者は特に、劇場や会場では後ろの方の席から見ることが多いです。
何故なら、映画を見ているお客様の反応を見たいから。

そんな時に、自分の作品をスマホで撮影している人を見つけてしまったら、どう思うと思いますか?

上の方で、「見つけたのがキャストじゃなくて私だったからまだマシだった」的なことを書きましたが、本当にそのキャストが見てしまっていたら、文字通り最悪でしたよ。
キャストの中で映画祭の評価が下がるだけでなく、映画というもの、芸能というものそのものに対しても嫌悪感を抱いてしまい、もしかしたらもう二度と映画に出演してくれなくなってしまうかもしれません。
そういうことも起こり得ます。
好きな人や、好きな作品のことは、ちゃんと大切にしてほしいです。
「礼儀」とか「敬意」とか以前に、好きなら大事に扱ってほしいです。

(なら、好きなキャストじゃないなら良いのかって?寝言は寝て言え)

それに、もし私じゃなくて他の映画制作者だったら、最悪その場で上映を中止した可能性もあります。
それくらい、映画を作る人たちは自分たちの作品をとてもとても大切にしているんです。




ふぅ。

長々と書きましたね。
まだ言いたいことはたくさんあります。
ただどれだけ書いても結局は今すぐ上映中の撮影行為がなくなるわけではないので、私は私なりに、自分の経験したことをもとに今後も映画制作を続けていきたいと思います。

自分の作品の上映中に、言い方アレですが映画泥棒されている現場に出くわすなんて、本当に滅多にあることではないと思います。
他の商業の監督さんも、恐らくその場を目撃した人はほとんどいないと思います。

正直、こんなこと人に言わなくてもいいやと思っていました。
けど、映画館のスマホの光の問題などが話題に上がるのを見ていて、やはりみんな徐々に、映画やエンターテイメントに対する意識低くなって、他人への配慮がなくなってきているなぁ…と感じて、悲しく思うことが増えてきました。
そんな折、内容としては「映画のマナー」の話題として通じる部分もあるかなと思ったので、少しでもみんなに広まって、考えてもらえたらなと思い書くことにしました。



まあ、映画以外でも、最近すごくいろんな、マナーやモラルの話が問題になってますよね。

日本人みんな、「気にしすぎ、騒ぎすぎ」って思うこともありますが、マナーやルールは守らなければいけないことで、それらには全て「何故守らなければならないのか」という理由が必ずあります。
その理由をどれほど重視するか、尊重するかは結論その人それぞれになってしまいますが、願わくば、日本人として、そのレベルは極力下がらないでほしいなぁ…と思うばかりです。



ひとまず率直に言いますと、あの場ではそっとしておきましたが、今後私の作品ではいかなる場所でも上映中の不正な撮影行為はお断りいたします。

次からは、見つけ次第後ろから本人の肩を叩いて「やめてください」って言います。

「エンドロール中にスマホ開く」のはぶっちゃけ自由じゃんって思いましたが、法的な不正に関しては完全にアウトなので今後厳しく対処していきます。


よろしくお願いします!!!
みんな、ルールを守って、たっぷり映画を楽しもうね!!!!!



2018,03,08

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