紫陽花6

あの日の紅い花びら


今日は一日、あの人のことを考えながら、旅をしていた。
その人が私だけに言ってくれた言葉を
心の中で反芻していた。幾度も、何度でも。

心ここにあらずで見ても、何倍にも色鮮やかに語りかけてくる風景。
ファインダーに映る日常の切り取りが
いとおしく想えてくる瞬間。

こんなきもちをくれた人に、この六月が特別になったことを言いたくて
水色の風船に伝言を結んで、そっと手から空に放した。

いつか、ゆっくり、もっと先に届くように。
その時、まだ一緒に、ずっと横にいてほしいと、願いをこめて。

あの人、と言ったら、またさみしく笑うだろうか。
「あの」は過去。 もう遠いってことだよって。
君の屈託ない笑顔と笑い声が、いつまでも私の中に響いていく。


- - - 8× キリトリ - - - 紫陽花の残り香4


いつか自分の本を作ってみたい。という夢があります。 形にしてどこかに置いてみたくなりました。 檸檬じゃなく、齧りかけの角砂糖みたいに。