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ブラック召喚

『五寿司ソロッテ』 第2シリーズー⑥ <完>

俺はブラック。全身黒ずくめで決めている、漆黒のクロ!
そう、俺は戦隊の奴らを偵察するために送り込まれたスパイなのだ。

なのに、うっかり見つかってしまって
なぜか今、5人と一緒に寿司屋にいる。
どうしてこうなった。俺の歓迎会が開かれているじゃないか。

「すごいなー。追加戦士が来るなんてなぁー」と緑。
「聞いてないよー」と黄色。
「五から六にアップだな」と青。
「やけに悪の手先っぽい衣装も、新鮮よねぇ」と桃色。

こいつら阿呆なのか。
なぜ見抜けない。こんなにわかりやすく悪っぽいのに。

「ほら、食べろよ! 何がすきだ?」
赤いやつが、気を配って俺に色々すすめてくる。

「黒のネタってねーな。ああ、海苔だな、海苔!」
緑の頭に皿のせたやつが、気軽に肩を叩きやがる!

しかし、どうもこいつらには危機的意識がたりないんじゃないか。
こうも人を簡単に信じちゃっていいのかよ。
だいたい戦隊ものの割には、今までの話に一回も敵と戦うシーンがないぞ。

いや待てよ、親し気に見せかけて、俺の腹を探ろうって作戦か。
ふっ、そうは行くかよ。俺はこう見えて精鋭だぞ。
(の割にすぐ見つかったけど)

いやいや、何でもすぐに疑うのは俺の悪い癖なのかもしれない。
こいつら、本当に歓迎してくれてるのかもっ。

あ、なんかサビが効いてて、涙出てきた。
そういや、こんな風にやさしく迎えられたのって、いつ以来だ?
ああ、俺、もうここで生きてもいいかもしれない。

新戦士、ブラック。(ポーズを決めてみる)

やばい、ヤバイ、取り込まれるー。
こうやって人の心につけいってくるあたたかさ。カァー。
あ、しまった、つい鳴いてしまった。俺の正体は「カラス」。

「あれ、俺以外は、みんな鳥っ?」
緑が、豆鉄砲くらったハトみたいな目をして、指さしてる。
ニワトリ、ペンギン、ひよこ、フラミンゴに、カラス!
あ? 今気づいたのかよ! 

「そっか、ブラック入ったら、もうグリーンいらないな」
って、赤。言っちゃいけねーだろ。

「やーだぁ、みんな羽ついてるなら、科学忍者隊の方じゃん!」
緑の頭の皿が急激に乾いてるな。
仕方ねぇ、茶でも注いでやるか。
「アチチッ!」
「気が利くねぇー」とみんなが拍手。

すっかりみんなに打ち解けた、新加入?のブラックなのでした。

えー、昨今の物語では
ダークサイドに落ちる人が多々いる一方
まぶしいブライトサイドに照らされて
ぴかっと心に灯りがつく人(トリ)もいる、世の中なのですな。

めでたし、めでたし。

<おわり>



ご愛読ありがとうございました。
笑っていただけたら、幸いです。🍣

いつか自分の本を作ってみたい。という夢があります。 形にしてどこかに置いてみたくなりました。 檸檬じゃなく、齧りかけの角砂糖みたいに。