名も知らぬ祖父

自分には祖父が一人しかいなかった。こう書くと片方の祖父は何か人間関係で揉めていたのかと思われそうだがそれは違う。父方の祖父は自分の父が2〜3歳くらいの時に亡くなっている。なので自分の父も父親(自分で言うところの祖父)のことは全く記憶にない。父親は4人兄弟の末っ子で一番上の伯父が父親の10歳上なので中学生くらいまでの記憶はあるだろう。

もしかしたら幼少期に「なんで自分にはおじいちゃんは一人しかいないの?」と子供の純粋な疑問で父や伯父伯母、何より若くして夫を亡くした祖母の心をえぐる発言をしていたかもしれないし、してないかもしれない。だが幼少期の自分はそんな事はしていないと思う。もししていたら祖父の思い出話の一つでも誰かが教えてくれていたはずだから。

祖父の名前は知らなかったが職業だけは把握している。だがどんな経緯で知ったのかは覚えていない。父が何かで喋っていたような気がする説が自分の中では濃厚になっている(笑)これは父から直接聞いたのだが、祖母は父に対して祖父の事を何も話さなかったらしい。若くして女手一つで4人の子供を育てなければならなかった祖母が話したくない気持ちもよく分かるし、父は子供ながらに何となく聞けなかったと言っていた。そして幼少期の自分も何となく祖父の事は聞かない方がいいんだろうなと察していた。三世代に渡ってDNAがしっかり引き継がれているなとちょっと笑ってしまった。

ちょっと前に父がファミリーヒストリーを見ながら「俺も爺さんより昔の人の名前とかはさすがに知らないな」と言ってたのを聞いて「俺も祖父の名前知らないけどね」と返した。父は「えっ、知らなかったっけ?」と少し驚いたようなリアクションをしていたがすぐに祖父の名前を教えてくれた。

「祖父の名前くらい普通に聞けば良かったじゃん」って思われる方もいるかもしれないけど、何となくできなかった。ただいつかはいなくなってしまう父や伯父伯母が健在なうちに聞いておこうとは思っていた。もし自分がファミリーヒストリーに出るとしたら名も知らぬ祖父の事を調べてもらおうと思っていた。そしてようやく知ることができた。

この状況が落ち着いたら必ず墓参りに行くのでそれまで待っていて下さいね、昌夫さん。ちゃんとお会いできるのは数十年後になりますけどね笑

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