小さな世界

 消えてしまった小さな世界。
 青い草原。かわいい小鳥。肩に止まって待ち合わせ。
 私は立木になってあげる。静かで風そよぐ、時間のない時間。

 二羽は並んで飛び立っていく。薄い海のような空と、この穢れなき豊かな大地。踏みしめて、瞬きをする。
 ここは楽園。憂いのない地。永遠の安息所。

 でも、行かないと。待っている人はいないけれど、義務もまったくないけれど。

 「私」がそこにいるのなら、「私」は穢れていかなくちゃ。
 それを「私」が望んでいるなら。
 それを「私」が望んでいるから。
 小さな世界。綺麗な空気。あぁ美しき憧憬よ。

 さようなら。私の小さなカンペキな世界。終わってしまった幸福と、満たされはしない渇望に、どうかまだ見ぬ祝福を。

 愛を。

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