性についてのおしゃべり


(彼らの通っている高校の校則はゆるゆる。休み時間にはスマホゲームやってる奴が普通にいる。でも授業中に電源切り忘れて携帯が鳴ると先生ガチギレする。「校則緩いのは、おめーらが自分で何をどうすべきか分かってるってこっちが信頼してるからやねんぞ」ってわけ)

真子「おう。漫画やんけそれ。何読んでんの?」
珠美「俺たちの異世界では同性愛以外許されていない」
友里「何そのタイトルやば」
真子「あー。今度アニメ化されるやつな」
友里「マジそれ? 世も末だな」
珠美「結構面白いよ。主人公とヒロインが異性愛という禁断の愛を追い求めつつ、周りは百合と薔薇でいっぱいになってるし、主人公は腐男子で、ヒロインは姫女子って設定だから、何というか、明るくてちょっとエッチなんだけど、こうなんというか、性的な感じが一切不快じゃなくて、あと異世界ものあるあるへのツッコミみたいなのもいちいち面白くってさ……」
真子「そんなおもろいの?」
珠美「原作小説持ってるくらいには好きだよ私」
友里「ついていけねーわ私……」
真子「友里はあんまりそういう流行りものの漫画とかアニメとか好きじゃないよな」
友里「好きじゃないっていうか、実際に読んだり見たりしたら好きになることもあるんだけど、食わず嫌いしちゃう」
珠美「もったいないよ友里ちゃ~~ん」
友里「でも恋愛ものがそもそもあんまり好きじゃないんだよなぁ。いまいち分からんもん。すぐ人のこと好きになる人の気持ち」
海「私はフィクション的な恋愛は全部ギャグだと思ってる」
珠美「あ、海ちゃん。これ読んだことある?」
海「全巻借りて読んだことある。原作は読んでないけど」
珠美「どのキャラ好き?」
海「私は正雄が好きだなぁ。すぐ人のこと馬鹿にするくせに、間抜けすぎてすぐピンチになって、そのたびに馬鹿にしてた人に助けられて、それで好きになっちゃうんだもんね。根が素直でかわいい性格してるからそんな感じなのにいつの間にか取り合いになってるのも面白い」
友里「それ男同士でやってんの?」
海「もちろん。さわやか系、王子様系、マッチョ、ショタ、クズ、よりどりみどりですぜボス」
珠美「クラス丸ごと転移してきた上に、その世界の貴族とか平民とか軍隊とか、他の国の学校からも送られてきたりした人がいたりとか、何でもありだよね」
海「しかも主人公とヒロイン以外全員ゲイかレズだからね。どうしてこの人の書くゲイやレズってみんなこんなにユニークで濃いのかなぁって思ったら、作者自身がめっちゃそういう系の場所出入りしてて、そういうとこで出会った人をモデルにしてるってネットのインタビュー記事に書いてあって、ちょっと感動した」
友里「なんかちょっと面白そうに思えてきた」
真子「でも私思ったんだけどさ、LGBTとかって、そういうのは不健全だって昔迫害されてて、今はそういう迫害はよくないよねって時代の流れじゃんか? そういう時にさ、同性愛以外許されない世界って、なかなか世の流れ的に微妙なライン攻めてない?」
海「いやそれがねぇ、同性愛以外許されないっていうのは、主人公たちが勝手にそう思い込んでいる部分があって、別に周りが同性愛を強制したりはしてないから、そんなに問題なさそうなんだよね。あくまで、同性愛が普通だとされてる世界観で、彼ら自身にとってもそれが自然っていう設定だから……」
友里「こういう質問していいんか分からないけど、子供は作れるん?」
海「魔法で一時的に性転換して作るって設定」
友里「あー確かにそれならあんまり角が立たないな」
珠美「はっちゃけてる割に色んな所に配慮してるんだよねぇ」

海「でもさ、時々思うんだよね。同性愛とかってあんまりにも面白おかしく扱われ過ぎじゃないって」
友里「差別されるよりはマシって感じで、ネタにされること多いよな。キモいとか直せとか言われるよりは、面白いからいいじゃんって言われてた方が、って感じなんかな。あんまり私そういうの気分よくないけどな」
珠美「あーそういう見方もあるのかぁ。私バイだけど全然そういう風に思ったことなかった。その、普通の異性愛のコンテンツだって、ネタ扱いというか、なんか気持ち悪いのもいっぱいあるし、そんなもんかなぁって思ってた」
真子「そうか? レズはともかくとして、ゲイに関してはあんまりにもネタにされ過ぎてる感じするけどな」
海「正直あれ何が面白いのかよく分からない」
友里「あれだろ。子供のころってさ、ちょっと変なものに興味持つじゃん。怪獣とか、宇宙人とか、そういうのが好きになる時期あるじゃん。そういうのの延長じゃない?」
真子「んー。幼稚すぎん?」
海「なんかふと思ったけど、そういう勢いだけというか、奇妙だから好きみたいな趣向よりは、ご都合主義的な面白さのある少女漫画とかハーレムものとかの方がまだ大人っぽい気がしてきた」
友里「どうだろうなぁ……」
珠美「まぁ別に、どっちがいいとか悪いとか決めなくていいと思うけどなぁ」
真子「でも不快になる人が多い楽しみって、多少は控えた方がいいんじゃないかなぁって思う」
海「あー。その辺って難しいよね。エロいコンテンツがどれくらいでかい顔していいかっていう問題でもあるしね」
友里「エロに限らんけど、スマホ見てると時々変な広告出てくんのほんと不快」
珠美「あ、友里ちゃんとかでもそういうの出てくるんだ。私、変なことばっか検索してるから出てくるんかと思ってた」
真子「私はノーコメントで」
海「これは日常的に変なサイト見てるヤツですね」
友里「でも私、時々興味本位というか怖いもの見たさで変なこと検索することあるからなぁ。全くそういうの知ない人でもエロい広告出てくんのかな? 分からん」
珠美「エッチなこと検索しなさそうな人……りっちゃん? りっちゃんスマホ触ってて、エッチっていうか、下品な広告出てくることかる?」
理知「私はそもそも滅多にスマホ触らないから……」
真子「まぁせやろな」
珠美「えーじゃあ……うーん。このクラスむっつりスケベ多いからなぁ」
海「高校生にもなってそういうことに一切興味がない人ってあんまりいないんじゃない?」
友里「性欲にしろ知的好奇心にしろ、何かしら見たりはするよな」
真子「君らほんと恥じらいってものがないよなぁ」
珠美「前世に置いてきました!」
海「私は別に隠すものないからなぁ。でも、自慰とかするようになったらどうなるんだろうなぁ私。やっぱり恥ずかしく思うんかな?」
友里「さすがにそれは恥ずかしいんじゃない?」
真子「マジで、深夜でもないのによくそんな話できるわ……」
珠美「真子ちゃん深夜になると自分からめっちゃ突っ込んだ話してくれるもんね?」
真子「お前が話しすぎるから、それに合わせるために話すしかなかったんだよ」
珠美「え、そうだったの? ごめん」
真子「いや、照れ隠しだから!」
友里「私さ、エロい話とかよりもこういうイチャつきの方が恥ずかしいと思うんだよな」
海「分かる。露骨な仲良しアピール、ちょっと恥ずかしいよね」
真子「……」
珠美「あー。真子ちゃん恥ずかしがってる! かーわいい~~」
真子「私はこいつには敵わないんだ。分かってくれ……」
海「でもさ、時々思うんだけど、なんで女ばっかり恥じらいを持つことを強制されてるんだろうな」
友里「割とどこの国でもそうだよな。無知であること、みたいなことに価値があるとされてた」
珠美「それほんと意味わかんないよね。私みたいに興味津々で耳年増でも処女、みたいなことって珍しくもなんともないのに。やることやってても無知な人いるし『性に関して無知=処女』は昔ならともかく、今は全然そうはならないよね。そもそも避妊方法が確立された現代では処女にも価値がほとんどない……」
海「処女についてはよく分からないけど、現実問題このご時世スマホで色々調べられる都合上、完全に無知でいるのって不可能なのに、無知を演じているやつほんと多すぎてさ。このクラスにも結構とぼけてるやついるけど、なんでそんなことしなくちゃいけないのかよく分からん」
真子「やっぱ、男の目が気になるからじゃない? 女子高に行った友達とか、そういう意味ではすげーオープンになってるし」
海「エロい話すると、男からモテなくなるから、とか? それか、体目当ての変なやつに好かれてしまいそうだから、とか?」
友里「あるだろうなぁ。こんな私でさえも、時々男から変な目で見られるし、痴漢されたことだってあるわけだからなぁ」
珠美「やだよねぇ、痴漢。死刑でいいと思う」
真子「性犯罪って全体的にもっと重罪でいいと思うのは、私たちが女性だからなのかな?」
海「男にとっても性犯罪ってキモいし罪深いでしょ。というか、私の知る限りだと男性の方がそういうのに厳しいイメージある。普段から衝動抑えてるからこそ、そういうのを抑えない人間に対して許せないって思うのかもなぁって想像してる」
友里「男がみんなそんな衝動抑えてるなんて想像したくねぇな。キモいわ」
珠美「まぁまぁそれは大目に見るべきじゃない?」
真子「自分がいざ子供を作るってことになってくると、やっぱりそういう欲望がないと困るんだろうなぁとは思うよ。だってさ、行為ってさ、怖いしキモいじゃん。冷静に考えてみるとさ」
海「そうね。キスとかもそうだけど、なんか汚いよな。他の人の粘液に触れるっていうのが、それ自体でキモい」
友里「そういう感情って、男にもあんのかな?」
珠美「男同士でキスしてもなんとも思わないって人からすると、ないかもしれないけど、私の知ってる限りは、やっぱり男性も女性も好きな人以外とはそういうことしたいとは思わないんじゃない?」
真子「やっぱり性欲があるから、そういう気持ち悪いことに関して目をつぶれんのかな?」
海「私は結局人がすぐ異性を好きになるのって性欲そのものだと思ってるし、キスをねだったり温もりを求めたりするのも、それが特定の異性を相手に限定する場合、まぎれもなく性欲だと考えてる。性的接触を考えてなくても、本能的にそういう風に判断してるんだろうなぁって思ってる」
友里「なんかキモいよなぁ。恋愛って」
珠美「えー。私は恋愛そのものを気持ち悪いって思ったことないけどなぁ。この世には気持ち悪い人が一定数いるってだけで」
真子「私はたまよりの考えだけど、多分友里や海はそういう意味じゃなくて、なんか別の意味での気持ち悪さを感じてるんだろうなぁって思う」
友里「分からないのが怖いっていうより、なんかさ……性に縛られるってこと自体がなんか不快なんだよな」
海「あー分かる。人を好きになる気持ちに性別を気にしたくないっていう気持ちがあるんだと思う。私の中に」
友里「そうそう。だってそういう肉体的な接触とか遺伝子的なあれを人の好き嫌いの判定基準にするとさ、その相手の人格とか、後天的に獲得された長所とか、そういうの無視して人を判断することになるわけじゃん。そういうのってやっぱ気持ち悪いなぁって思う」
珠美「なんかそう言われると、確かにそうかもって思う」
真子「そういう意味では、同性愛的なフィクションの利点って、そういう気持ちの悪さを忘れて人との温もりというか、愛情というか、そういうものを肯定できそうな感じがするからなのかな?」
海「あぁなるほど。だから私は同性愛ものが普通の恋愛ものよりも面白く感じるのかな?」
友里「私は別にレズもゲイもそんな好きじゃないけどな。嫌いでもないが」
珠美「なんか頭使うの疲れたよー。りっちゃーん。にゃあーん」
理知「よしよし」
真子「でも実際のところ、恋愛と性って繋がっているけど、完全に同じものではないよなぁ。どう考えても」
海「性欲とかが一切なくなっても恋愛って成立すると思う?」
友里「真なる意味でのプラトニックラブってやつか」
海「うん。我慢するとかじゃなくて、本当にお互い性的な欲望を対象に感じてなくても、恋愛ってできると思う?」
友里「できるかできないかだったら、できるだろ。つーか、男って別にエロいこと考えてなくても立つことあるし、出すこともできるんだろ? だったら、性欲っていらなくね? 仲のいいふたりが子供欲しいねってなったときに、それじゃあまぁ、ヤることヤらないと子供出来ないから、頑張るかぁって感じでヤればいいんじゃないの」
海「めっちゃドライな考えだけど、確かにその通りだと思う」
真子「その辺の考えってほんと人それぞれだよね。やっぱり強く本能的に求められたいって思う人も多いわけだし」
友里「それがほんまによく分からん。自分の意志がそのつもりじゃないのに、向こうが勝手に欲望押し付けてきたら、きもいだけでしょマジで」
海「でも実際には、そういうのを嬉しいって感じる人もまぁまぁいるんでしょ?」
真子「好きな人限定じゃない? 好きな人に求められたら、嬉しくて自分もその気になっちゃう、みたいなん」
友里「自我弱すぎん?」
海「りっちゃんどう思う?」
理知「人と人とは案外互いに影響を及ぼし合う生き物だし、性的な本能っていうのは私たちが思っている以上に強いものだと思うよ」
友里「そういうもんか?」
海「私たちがまだ未熟なだけってこと?」
理知「個人差強いから何とも言えないし、他でもない私自身が性については意図的に抑圧してるからよく分かんないな」
珠美「りっちゃんっていつもエッチなこと我慢してるの?」
理知「そういう言い方はしないでほしい」
珠美「ごめんなちゃい」
理知「男性にとってはどうか分からないけど、私たちにとって恋愛はどうあがいても性と結びついてしまうし、性も恋愛もあまりに私たちの精神を支配し過ぎてしまう。特に子供を産むとほぼ必ず私たちはその以前と以後では考え方も価値判断も変わってしまうだろうし、私は……子供を産んでも考え方が変わらないくらいに、ちゃんと考え抜いて、自分自身の心と体をしっかり理解してから、そういう事柄に取り組んでいきたいんだよ」
真子「正論なのは分かるけど、堅苦しすぎん?」
友里「私みたいなんでも、子供産んだら性格変わるんかな? 全然想像できんけど」
海「友里には変わってほしくないなぁ。たまとか真子とかは普通に変わりそうだし、変わっていいと思うし、多分私も表面的な部分は確実に変わる気がする」
珠美「赤ちゃんってかわいいよねぇ……」
真子「うん」
友里「私は子供あんまり好きじゃない」
海「私も子供あんまり好きじゃないってこと考えると、もう単に私たちはまだまだガキだってことなのかもしれない……」
友里「別にガキでもいいだろ」
珠美「でも好きな人と大恋愛して、結婚して、子供産んで、みたいなのってやっぱり憧れない? 私、そういう普通の女としての幸せに心から憧れるし、素敵だなぁって思うんだ」
真子「まぁそんな都合よくうまく行くことは滅多にないと思うが、気持ちは分かる。っていうか、私みたいなのじゃそういうのは現実的じゃないけど、たまくらいかわいくて、ある意味では純粋な女なら、そういう人生も歩めそうだなぁって思う」
珠美「でも私医者にならなくちゃいけないんだよね。両方とも望むのって無理そうだなぁって思ってる」
友里「まぁ、私はたまが女医になってるところも想像できなくはないというか、向いていないってことはないと思うな。人に寄り添えるし、頭いいし、なんだかんだ仕事も早いだろうしな。課題とか片付けるの早いじゃん」
珠美「えっへっへ」
海「なーんか、羨ましくなってきたぞたまみぃ」
珠美「こいようみぃ」
海「うりうりぃ」
珠美「うみうみぃ」
真子「なんだこのぐにゃぐにゃした争い」
友里「理知はさ、たまみたいに『女としての普通の幸せ』みたいなのへの欲望ってある?」
理知「あるよ」
友里「どうやってそれを自覚したわけ?」
理知「難しい問だね……夢とか無意識的な空想とか、そういう部分もあるけど……私はやっぱり、自分が小さいものや弱いものを守るのが好きな人間なのは自覚してるし、自分の子供に献身的に人生を捧げるのは美しいし、気高いことだと思うんだ。それを分解して説明しようとすると、確かに本能とか遺伝子とかになっちゃうんだけど、でも本能も遺伝子も、そう悪いものだとは思ってないからさ。それに、私の決めた生き方と、結婚とか出産とかって、別に矛盾してないから、それは自分が好きなようにすればいいと思ってるんだ」
友里「ふーむ。理知はやっぱりその点では大人なんだな。こういう質問は意地悪かもしれんが、私みたいにその辺がぼんやりというか、まだ幼い人間に対してはどう思う?」
理知「私は友里が幼いとは思わないよ。人はそれぞれ異なる気質を持って生まれてくるし、本能的な部分や遺伝子的な部分だって、当然異なるわけだし。人それぞれ別の成熟の仕方をするし、私の見立てだと、友里は根っこの部分から私とは違うし、違ってるからこそいいんだと思う。さっき友里が言ってたように、性欲みたいなのがなくても人は繁殖活動が行えるっていうのも本当のことだと思うし、そういう感じでつがいになって子供を作った人たちだって少なくないと思う。そもそも、人間必ずしもつがいになって子供を作らなきゃいけないわけでもないしね。
 この先友里がどんな出会いをするかは私が想像できることではないから何とも言えないけど、でも友里は人のことを大切にするし、相手のことをちゃんと見ようとするから、私は友里のことを恋愛が向いてないとか、できないタイプの人間だとは思わないよ」
友里「こんなこと言うのはなんだけど……さっきさ、相手が一方的な欲望向けてきたら気持ち悪いじゃんって私言ったじゃんか? でも理知とかが、なんか事情があって私の何かを求めるなら、それは嬉しいと思うな。結局のところ、真子の言うように、相手を好ましく思っているかどうかなのかもな」
真子「その人のためにどこまでできるかってことでもあると思う」
珠美「信頼もあると思うなぁ。りっちゃんはそもそも自分の欲望のために誰かを使ったり絶対にしないから、もしりっちゃんが私に何かを求めてくるなら、きっとそれは正しいことなんだろうなって思う。長い目で見たら、きっと私自身のためにもなることなんだろうなって思うし、命をかけるとかじゃないなら何が何でも助けになりたい」
海「でもさっきりっちゃんも言ってたけど、女ってやっぱり人生の中での優先順位が出産を機に大きく変わるわけじゃん? 社会的な成功とか人からどう思われるかよりも、子供が幸せであることが何よりも大切になるわけじゃん? 一般的に言って」
真子「必ずしもそうとは限らないけど、そうなることが多いらしいね」
海「りっちゃんはそれについてどう思う? 子供を産んで自分が変わってしまうことって怖くない? 特に今まで大事にしていたものを、新しくできた大切なもののために平気で犠牲にできちゃう人間になることについて」
理知「多分、人の変化ってそんな単純であることは珍しいと思う。もっと色々な感情が複雑に絡み合いながら変化していくし、私はその中で自分自身らしくあることが私自身の人生の目的であり手段だからさ。大切にすべきものに対しては、もし私の本能や欲望がそこから離れても、私の意思と理性がそれを守っていけたらなって思ってる。もし本能や欲望が、そういう気持ちよりも強くなって、かつて大切にしていたものを傷つけてしまうことが予想されるなら、私は早めに場所や状況をコントロールすることを考えるかな。遠ければ、距離さえ置いていれば、傷つけずに済むことは多いから」
友里「なんか、人として当たり前のことって、そうやって言語化していくとすごく難しいことのように感じるな」
理知「自分自身と上手に付き合って、自分に恥じない自分でいるのって、そんなに簡単なことではないと思うよ。生涯それを貫けた人は、それがどんな人生だったとしても、最大の賞賛と尊敬に値すると思う」
真子「道徳なき時代に、理知を見てると道徳的に生きることの希望を思い出せるな。確かにそういう生き方って、美しいと思う」
理知「皆が皆そういう生き方をすべきってわけではないけどね。私はたまたま、ずっとそういう生き方をすべきだと思って生きてきたし、今のところ運よくそれに失敗していないだけだから。そういう意味では、私は他の人よりずっと単純なんだ」
海「単純っていうより純粋だよね。まるで誰かの理想を具現化したみたいな生き方だし」
友里「理知はすげぇよ」

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?