Magazine Study vol.10

【今号の目次】
1.特別企画 対談「作業療法研究とベイズ統計」
2.8月13日のらいすた概要
3.8月13日のらいすたQ&A
4.その他のQ&A
5.今号の研究論文リスト
6.時事ニュース
7.研究アイデアをシェアしちゃいます!
8.私のオススメ本
9.まがすたでしか言えない〇〇
10.近況報告
11.次回のLive Sudy
12.質問送り先案内
13.【4日間限定付録!】OBP2.0概要 Live動画ダウンロード in 小樽臨床作業療法研究会ver.
14.署名

☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★
1.特別企画 対談「作業療法研究とベイズ統計①」
☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★

1)ベイズ統計のススメ

寺岡:作業療法研究は理論研究、量的研究、質的研究、事例研究などなどいろいろありますが、今回は量的研究のベイズ統計にフォーカスを当てたいと思います。

京極:いいですよ。

寺岡:ベイズ統計は従来の統計に比べて、解釈がしやすく、柔軟性が高いという利点があるんですよね。

京極:はいそうです。

寺岡:私が面白いなぁと思ったのは「仮説が確からしい確率」を計算できる点です。「研究仮説が正しい確率」とも表現されていますが、これは研究する作業療法士が知りたいことそのものだと思いました。
https://www.kyougokumakoto.com/2018/07/python-pystan-ttest.html

京極:ぼくもそう思います。従来の統計学は帰無仮説と対立仮説を立てて、帰無仮説を棄却することによって対立仮説を採用するという方法でした。

寺岡:帰無仮説というのは否定したい仮説で、対立仮説というのは研究者が本来主張したい仮説ですね。

京極:そうです。例えば、作業療法に効果があると証明したい場合、従来は「作業療法には効果がない」という帰無仮説を立てて、データでその仮説がレアだと示すことによって「作業療法には効果がありそうだ」と主張していくわけです。

寺岡:その方法はわかりにくいですよね。帰無仮説と対立仮説のセットで検証する従来の方法は、帰無仮説が間違っているとも、対立仮説が正しいとも言えないわけですから。

京極:そうなんですよ。直接言えることは、帰無仮説を前提にしたときに手元にあるデータが得られる確率が十分小さいかどうかだけなので。

寺岡:それに、実は帰無仮説って実際に検証する前から間違っていることがわかっている仮説ですもんね。例えば、「作業療法には効果がない」という場合、「介入前後の数値の差は0」という意味なので±0.01の差も許容できないわけで、現実的にはありえないわけです。そうなると調べる前から帰無仮説は間違っていることはわかる、という話になっちゃいます。

京極:そうなんだよね、笑。帰無仮説と対立仮説のセットからなる仮説検定モデルも使い道はあるけども、解釈のしやすさという点ではわかりにくいことは間違いないです。

寺岡:それに対して、ベイズ統計は「作業療法に効果がある」あるいは「作業療法に効果がない」という仮説が正しい確率を直に計算することができます。これって、研究者がやりたかったことだと思うんですよね。

京極:ぼくもそう思います。ベイズ統計は作業療法でまだほとんど使われていないけども、ベイズ統計を使ったぼくたちの研究論文がAmerican Journal of Occupational Therapyに採択されたし、これからどんどん増えていくとよいなぁと思います。

2)ベイズ統計の実際

ここから先は

14,433字

¥ 300

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?