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映画 悪の華 原作を圧縮し無難に映画化しているが、えぐさや迫力に欠ける。

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 時間の関係上、カットされているエピソードもあり色々と原作ファンからは文句も出ているようですが、2時間にまとめるとこんなものでしょう。

 色がつき、役者が演じることでシーンが引き締まることもあるのを感じた。

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 恋人の佐伯さんに、自分が体操着を盗んだことを告白するために夜の学校に忍び込み、黒板に罪の告白を書き殴るシーン。かなり迫力があり楽し。

 春日君役の伊藤さんの演技が光った。

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原作では、佐伯さんがけっこう好き・・・

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実写の佐伯さん役の女優は、整った顔をしているが演技力に難ありと見た・・・。ただの底意地の悪いぶりっ子にしか見えないのが残念だ。


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いがいと、はまっていたのは常盤文役の

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春日の今の彼女だが・・・。キャラの背景の複雑さまで演じきっていて、なるほどと思った。

仲村は難しい役だ

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玉城ティナががんばった・・・


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原作を大きくは逸脱しておらず、短縮版という風に思えた。

タイトルの「悪の華」はボートレールの詩集である。こんな感じだ・・・。

絶えず私の隣で悪魔が動いている。
触れることのできない空気のように、私のまわりを泳いでいる。
私が彼を飲み込むと、彼が私の肺を焼き、
永遠の罪深い欲望で満たすのを感じる。

背徳的な雰囲気を全体的に醸し出している詩集です。

映像化するとこれになります。

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好きな女の子のブルマーの匂いを嗅ぐ。そして、持ち帰る。

青春の鬱屈したこの感情を、仲村に見られて隷属状態になっていき、エスカレートしていき、ついには仲村の見ている景色にまで春日は到達する。それは虚無だとか絶望だとかに近い葛藤だったのだと思う。

仲村に春日が執着するのは、この作用のせいであり。仲間意識、同類意識がそうさせるのであって、たぶん、これは愛じゃない。社会やクラスに感じている疎外感の裏返しだ。本当の愛は、むしろ佐伯に対する感情や、高校になってからの常盤に対しての気持ちだと思う。

ニーチェの言葉にこんなのがある。

「深淵を覗く時 深淵もまた、あなたを覗いている」

春日は、この深淵の風景を仲村の心の奥底に見出したのだ。それが「悪」だ。春日はその瞬間、鏡にうつった自分自身の孤独と向き合った。そして、絶望した。

変態という言葉を仲村は連呼する。春日をそう呼ぶ。仲村は春日を同類と見ているが、実は説明できない意味不明の部分があり、その概念を「変態」と呼んでいて、それは自分には理解できない部分なのである。

 だから、仲村は自分の世界に引き寄せようとする。それは自分を助けて欲しいと思う叫び声なのだ。しかし、祭の日、心中しようとした時、中村は春日を台から落とし一人で死のうとするのだが、あの瞬間にこそ、この作品の本質的というのかな、仲村の本当の奥に隠された心というのかな。見えた気がする。

見て損のない映画です。

2021 3/7










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