100件以上の事例からわかった「DXの現場課題 TOP3」~営業も経理も経営企画も、あらゆる企業のDX課題はここに集約される~
企業がDXに取り組もうとする時に直面する課題には、どんなものがあるのでしょうか。Marsdy代表の武藤大揮は「直近2年間に100件以上のDX案件に取り組む中で、その課題は大きく3つあることがわかってきた。企業規模や業種、業務に関わらず、この3つのうち複数の課題を複合的に抱えていることがほとんどだった」といいます。
DXの課題は共通している
――DXで企業が抱える課題は共通しているそうですね。
武藤 はい。私たちは大企業から中小企業まで、幅広い業種や部署で100件以上のDXの支援をしてきましたが、直面している課題はとても似通っていることがわかってきました。
――企業規模や業種、対象となる業務の内容によって、抱える課題に傾向はありますか。
武藤 それが、違いはほとんどなく、むしろ共通しているのです。大企業も中小企業も、どんな業種や部署、業務内容であっても、課題は大きく3つに集約されます。ただ、3つのうちのどれか1つということではなく、複数の課題を複合的に抱えていることが多いです。
そしていずれも、これまで「解決する方法が見つからない」「解決するためには膨大なコストとリードタイムが必要」といった理由であきらめて、DXが進められなかったところばかりです。
①情報加工 課題
――3つの課題とはどんなものでしょうか。
武藤 まず1つ目が情報の加工に関わる課題で、「基幹システムから得られる情報と、ほしい情報、使いたい情報の形にギャップがあり、従業員が手で加工する手間が発生している」というものです。
多くの企業が使っている基幹システムは、オラクルやSAP、セールスフォースなど既存のアプリを活用したもので、それぞれの企業がそのまますぐに活用できる形のアウトプットが出せるほどの柔軟性は持っていません。
そのため、「定例部会で販売戦略を検討するために必要なレポートを作成するため、システムから得た情報を毎回誰かが加工する必要がある」「取引先から求められている情報を報告書にまとめるために、データを複数のシステムから集めてきて加工しなくてはならない」ということが、あちこちで起きているのです。
こうした、情報を加工する作業のために、専任のアルバイトや契約社員、派遣社員などを雇っていることもありますし、社員がほかの業務の片手間におこなっていることもあります。経営幹部が自分で手を動かしている企業も少なくありません。ルーチン作業のために人件費がかかっていたり、本来業務(営業活動や企画業務、経営幹部の場合は経営の意思決定など)に費やすべき時間が削られていたりすることも多いのです。
住宅会社から戸建て住宅の点検や検査を請け負う、株式会社家守りでも、以前は社内システムで管理している住宅の検査結果の情報を、それぞれの発注元の住宅会社から求められている形式の報告書にまとめるために、かなりの手間がかかっていました。
※参考:株式会社家守り導入事例
――こうした課題はなぜ、これまで解決されないままだったのでしょうか。
武藤 基幹システムから望む形式の情報を直接得られるようにするためには、データの持ち方そのものを変えなくてはならず、基幹システムの入れ替えをするしかないと考えられてきたからです。しかしそれには膨大なコストやリードタイムがかかるため、結局手作業を続けている企業が大変多いのです。
②参照形式 課題
武藤 2つ目は、参照フォーマットに関する課題で、「データの形式がバラバラのため、システムで集約して一元管理し、処理することができない」というものです。
フォーマットが違うと、システムで自動的に処理することができません。こうした課題は例えば、複数の企業から情報を集めて、それを処理する必要のある業務などで多いです。請求書や発注書の処理などがこれにあたります。ほかにも、複数の部署でそれぞれ異なるフォーマットで管理されている情報を一括管理しなくてはならないケースなども該当します。
半導体商社のネクスティ エレクトロニクスも、同様の課題を抱えていました。取り扱う半導体商品ごとに異なる形式のエクセルファイルで受注状況を管理していたために、一元的に分析して、在庫管理を高度化しようとする際の壁になっていたのです。
分析や見える化のためのBI(ビジネス・インテリジェンス)ツールを使いたくても、フォーマットが揃っていないためにできませんでした。取引先からも分析レポートを求められていたのですが、「現状のエクセルでの管理方法を変えずして、形式がバラバラのデータを取り込む」という解決策が見つからず、頭を抱えていたそうです。
※参考:株式会社ネクスティ エレクトロニクス導入事例
この課題を抱える企業も、①の課題を抱える企業と同様に、専任のアルバイトや契約社員、派遣社員で対応していたり、社員が、手作業で対応し続けていたりすることが大半です。
――①と、課題の本質が似ていますね。
武藤 そうなんです。比較的、事業開発や経営企画、財務経理、営業など、幅広い部署で起こっていますが、①の基幹システムの情報加工に関わる課題は、売上や在庫管理などの日々のビジネスに関わる数字や情報の管理業務に関わることが多く、②の参照形式がバラバラという課題は、これらに加えて受発注処理や請求書処理、取引先への報告書作成などでも起こっています。
また、「フォーマットの異なる情報を集めて処理した後で、フォーマットの異なるアウトプットを出さなくてはならない」という、①と②の両方を抱えるケースもあり、そうするとさらに作業の手間が膨大になります。
③定期実行 課題
武藤 3つ目は、定期実行に関する課題で、「日次、週次、月次など、決まったタイミングで、手作業で情報を加工・処理しなくてはならない」というものです。
これは、必ずしも長時間かかる作業でなくても、決まったタイミングでおこなわなくてはならないので、他の業務をストップしなくてはならず、担当者に大きな負荷をかけていることが多いようです。
1日の中で複数回、こうした作業が発生する場合は、そのためだけにアルバイトや契約社員、派遣社員などを雇っていることもあるでしょう。しかし、毎朝数十分だけだったり、月次、四半期に1度だけだったりする場合は、社員がほかの業務を中断して担当していることもあります。四半期の会議用資料などの場合は、経営幹部が手を動かしていることも少なくありません。
――こうした場合、企業にとって何が問題になってきますか。
武藤 費やす時間という「工数」の問題だけでなく、「生産性」の問題も大きくなります。特に社員や経営幹部が担当している場合は、営業やお客さま対応、情報分析や経営判断などの本来業務を中断して作業に当たることになるので、生産性が下がってしまいます。
例えばマジェスティ ゴルフでは、以前は営業部門の担当者が毎朝、始業前に出社して、20~30分かけて手作業でデータを加工し、前日の売り上げ情報を全社員にメール配信していました。
※参考:マジェスティ ゴルフ株式会社 導入事例
「毎日のことではあるけれど、せいぜい十数分くらいだから」「四半期に一度だけだから」と、作業を担当している本人も問題を認識しないことが多く、課題が潜在化しやすいのも特徴です。
――一方で、定期的な作業だと、自動化しようという発想も生まれやすそうです。
武藤 定期的で定型化した作業だと、確かに「自動化できないか」という視点は生まれやすいかもしれません。しかし、この課題は①や②と組み合わさっていることが多く、データの標準化が必要になることが壁になり、自動化を阻んでしまうのです。
「解決できない」と思い込んでいる現場、課題の存在に気付かない経営層
――①の情報加工、②の参照形式、③の定期実行に関わる課題が、なかなか解決できない背景には、何があるのでしょうか。
武藤 まず、これらが会社にとって大きな損失になっているという認識が、広がっていないことがあると思います。現場は、困っていても「これまで通り、自分たちが手動でやるしか方法がない」と思っている。そして経営層は、現場でこうした課題があることを認識していない。そうした、「現場と経営層の認識ギャップ」も、これまで課題が放置されてきた大きな要因です。
――解決するためには何が必要でしょうか。
武藤 まずは、会社にとって大きな損失になっているということを認識すること、そして、解決可能であることを知ってもらうことが必要でしょう。
次に必要なのは、最新のテクノロジーの知見と、抱負なDX経験を持った外部の専門化の支援です。
こうしたDXの課題は、企業規模や業界、業種や部署、業務に関わらず社内のあちこちで生まれています。しかし、こうした垣根を横断し、経営目線と現場目線の両方から現状を分析して、最適なオペレーションを設計することができる専門家というのは、社内になかなかいませんし、育成するのも簡単なことではありません。
AutoDateではこれまで、100件以上のDX案件を手掛けてきましたが、どのケースも、先ほど挙げた、家守り、ネクスティ エレクトロニクス、マジェスティ ゴルフと同様に、「どうしたらできるだけ現状の業務を変えないままで、効率的に業務をアウトソースできるか」を考え、仕組みを設計して実行しています。
自動化できる部分は徹底的に自動化し、それ以外は手動で対応し、手動部分も含めてAutoDateにアウトソースしていただく形なので、①②③いずれの課題でも対応できるのです。
※参考:DXチームの作り方 解説記事
もし今回 挙げた3つの課題でお困りの企業のご担当者がいらっしゃいましたら、ぜひ私たちにご相談ください。
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https://autodate.jp/