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ミャンマー、模倣品天国に一番近い国

現在、ミャンマーでは、2021年の2月のクーデターから、多くの混乱が生じています。
ちょうど、ミャンマーは、民政化の最終プロセスが行われている最中でした。
過去10年間の行政や立法の民政化への具体的なプロセスも、まさにこれから施行されるものも多く、その意味では、国軍側は、ギリギリのタイミングでクーデターを行ったことが見受けられます。

これ以上遅くなると、もう引き返せないと感じたんだろうと思います。
多くの経済政策の立法化が終え、まさにこれから施行されるというタイミングでの、今回の政変でした。

ニセモノ品が大量に流通しているミャンマー

知財関連でいうと、ミャンマーでは、最高位の知財中央委員会のメンバーを、再度、選定することとしました。
いままでの知財中央委員会のメンバーは、民政側のメンバーが中心だからです。
そして、最高位の委員会ができた後に、民事の司法権のある知財機関、そして、知財の申請を受理し許可を行う知財局が、設立するはずでした。

この長い長いプロセスが、また、委員会メンバーの選定のやり直しという事態になりました。
すでに、ミャンマーに進出した日本企業の間では、商品を製造しても、ミャンマー国内で、その商品名が果たして使えるかどうか、この先もしばらくわからない状況が続きそうです。

心配なのは、ミャンマー国内では、ニセモノ品が大量に流通しています。
知財法の施行が、当分行われず、摘発すらされない、現在の好機を、ニセモノ品業者は見逃さないでしょう。
本来であれば、知財機関の下に、摘発や権利侵害に対する法的措置がとれる部門ができるはずでした。
が、まだ知財機関自体が出来上がっていません。

このような、市場環境が、今後の日本企業の現地ビジネスに多大な影響を与えるのではないかと心配しています。

見切り発車の日本企業

でも、いままでも、同様の環境にあったのだから、すこしくらい、行政の設立が遅れても、大きな影響はないのではないか、という声もあります。
しかし、日本企業の多くは、ミャンマーの民政化を信じて、見切り発車的に進出してしまいました。

もちろん、そこには、当時の日本政府の思惑もありました。
ミャンマーは、2011年に民政に移管後の翌年に、日本政府はヤンゴン郊外のティラワ経済区の上水道・下水道・道路・光ファイバーケーブル、次世代電力網といった最先端のインフラ整備を請け負うことができたんですね。

実際の開発は、ミャンマー側が日本企業を誘致して行うこととなりました。
これに伴い、当時の安倍首相も2012年にミャンマーへ訪問して、ヤンゴン郊外のティラワ経済区に、日本企業の誘致を約束しました。

日本企業の多くは、このような日本政府の後ろ盾もあって、今日のミャンマーへの進出を決めているのです。

現在、ミャンマーでは、2021年の2月のクーデターから、多くの混乱が生じています。
ちょうど、ミャンマーは、民政化の最終プロセスが行われている最中でした。
多くの経済政策の立法化が終え、まさにこれから施行されるという、最悪のタイミングでの、今回の政変でした。

日本政府の後ろ盾を持って、進出している多くの日本企業は、これから試練の時期を迎えることとなります。

プロセスが全くの白紙に戻る

特に、知財の関係でいうと、ミャンマーの商業省の準備状況が心配です。
ミャンマーの商業省には、知財局が設けられることとなっていましたが、このプロセスが全くの白紙に戻ってしまったのです。

ミャンマー知財局の上位機関自体は、商業省の内部にはありません。
副大統領がトップとして設立される、知財委員会と商業省の副大臣がトップとなる知財機関が設けられるのです。
商業省には、知財局のほかに、消費者局、貿易振興局、貿易局のように、対外経済の要になる部門が設けられる予定です。

特に、知財の分野では、知財の権利侵害に対して、法的措置がとれる、IP Enforcement WGが設立される予定でした。
例えば、模倣品の被害が生じた際には、消費者局、知財局とともに、IP Enforcement WGが連携して、ニセモノ品に対する対応を行っていくことになっていました。

これらの機関が、なるべく早く機能していかないと、タイやベトナムのように、本物品よりもニセモノ品の方が圧倒的にシェアをとってしまう恐れが、ミャンマーでも大いにあると思います。

国民の3割がニセモノ品を購入

ミャンマーの国民性は、日本に似ていて勤勉で真面目だと聞いているから、ニセモノ品を自ら買って使おうという人は、そんなにいないんじゃないの、と思うかもしれません。
しかし、最新のJICAが行った意識調査では、興味深い結果がでています。
ミャンマーの全国7州の一般市民1800名以上に、模倣品に対する意識調査をオンラインで行いました。

これを見ますと、過去1年間にニセモノ品を購入した人は、全体の3割いました。
ニセモノ品を購入した人は、男性よりも女性が多く、着るものや化粧品が多いようです。
その他には、電気製品や食品や医薬品のニセモノ品もあります。

僕も、以前、ミャンマーの医薬品のニセモノ品の調査を行ったことがありますが、普通のスーパーで、あたかも本物品のように販売されていました。
模倣品を購入した半分以上の人が、本物品と思って買ったら、ニセモノ品だったと回答しています。

本物品だと思って買った商品が。。。

つまり、ミャンマーでは、本物品だと思って買った商品が、実はニセモノ品だったということなんですね。
つまり、僕が調査した案件は、珍しいものではなくて、それが普通なんだということがわかりました。
医薬品でもそうなのに、服とか食品とかが、本物そっくりに売られているのは、容易に想像できますね。

現在、ミャンマーの商業省には、知財局が設けられることとなっていましたが、このプロセスが全くの白紙に戻ってしまっています。
ミャンマーの民政化を信じて、見切り発車的に進出してしまった、日本企業の多くは、これから試練の時期を迎えることとなります。

もちろん、そこには、当時の日本政府の責任もあります。


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