見出し画像

日本の知財活用の事情

日本では、それほど行われていないのですが、欧米では活発に、特許は売買されています。
特許売買のマーケットも、日本とアメリカを比べますと、数十倍以上の違いがあります。
これは、日本企業の特許権を利用するコンセプトが、欧米とは大きく異なっていたためです。
日本の特許の活用法は、主に社内の研究者の成果を査定するツールとして、長らく使われていました。

特殊な日本の知財活用

企業は、多くの研究者を、実際の成果だけで評価しようとすると、ほとんどの研究者は、事業に貢献する結果を出せずにいたんですね。
よく基礎研究は、事業化されるまで、すごく時間がかかるなんて言われていますよね。
事業化されない分野も、もちろん、いっぱいあります。
成果だけで研究者を評価するのは酷ですよね。
なので、研究者を、特許の出願件数や論文の発表件数で、会社が人事評価する制度が長らく続いていました。

クロスライセンスの弊害も

加えて、いろいろと他にも理由があったのですが、一番大きい理由は、日本は、歴史的にクロスライセンスが多かったので、特許の売却が、あまり積極的に行われなかったんですよね。 
クロスライセンスというのは、保有している特許の実施を、複数の企業間で互いに許諾し合うことです。
お金を支払う場合もありますし、無償の場合もあります。
なぜ、こんなことをしていたかと言いますと、ある製品の製造に有用な技術があるとします。

そして、複数の企業が、その一部ずつを特許として取得している場合がよくあるんですよね。
ひとつの会社で、技術を独占するということは、同じような製品を販売していた日本企業の場合は稀だったんですよね。
この場合に、企業間の特許侵害リスクを避けて、製品も効率よく製造して、利益を得たかったんですね。

そのために、クロスライセンスが利用されていました。
特許法ではクロスライセンスを容易にするために、実施許諾の協議を認めています(特許法92条)。
それじゃあ、日本では、特許権を取得しても、売ったり、買ったりする機会はないのかな、と思われるかもしれません。

急増した休眠特許

確かに、かつては、特許を売るような機会は、なかなかなかったんです。
しかし、ここ10年のビジネス構造の大変化で、休眠特許が急増しました。
日本の企業も、よく選択と集中と言って、事業構造の大変革を、積極的に行ってきましたよね。
それに伴い、もうビジネスがなくなっちゃった分野が、最近の日本企業にはいっぱい出てきたんですよね。

特許の場合は、持っているだけで、維持年金を支払わないといけないでしょ、しかも、外国出願していれば、そのすべての国で、維持年金の支払いが必要になってきます。
もう、会社はその特許を使うことはないのに、維持年金を支払うのは無駄だよね、ということで売却する話が、2000年後半くらいから急増しました。

二束三文の日本特許

このように、日本企業の特許権を利用するコンセプトが、欧米とは大きく異なっていたんですよね。
そのため、日本では、売買は行われていなかったのですが、事情が大きく変わってきました。
そこで、活発に売買されている欧米へ、休眠特許を売ったんですよね。
もちろん、欧米以外にも中国にも売っているに日本企業もありました。
国内で流通する特許も、多くはありませんが、もちろんありました。
そのため、いまの日本でも、特許を売買するルートは、ある程度は、出来上がっています。

ただし、多くの場合は欧米なんですけれどもね。


外国知財をもっと身近に
One Stop IP Service,
Masuvalley and Partners


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?