9月20日

ボディミストを髪に吹きかける。
このボディミストは、「貰い物」だ。
最低最悪の人間から「貰った物」だ。
小学生の頃私を虐めていた女が中学受験をして隣の市の中学校に行く事になってみんなと離れてしまうからと仲のいい女達に多種多様な物を渡していた。
それは、お菓子が好きな奴にはお菓子だったり本が好きな奴には本だったり各々に合ったものだった。
そして何故か私はボディミストを渡された。
このボディミストを渡された時、私は吐き気を催し排水溝に詰まった髪の毛に対するような気持ち悪さを感じていた。
女は私に委員会の仕事を押し付けた。
女は私に絵の具を食べさせて笑っていた。
女は私の髪を引っ張り蹴り飛ばした。
女は私の物を壊しゴミ箱に捨てた。
女は私の顔を雑巾で拭き綺麗になったねと言った。
あいつは。あいつは。あいつは。
私は女に死ねばいいと思うほどの恨みを募らせているのに、女は、私と仲がいいと思っている。あんなことをしておいて、「今までありがとう」なんて、虫唾が走る。
仲がいいから許される。遊んでただけ。
そんな言葉でお前のした事が許されるものか。
そんな感情を押し殺し、ボディミストをもらった私は得意になった作り笑顔を浮かべ「ありがとう」と言った。
ボディミストは、家に帰ってからすぐに机の鍵付きの引き出しにしまった。捨てればよかったのに、女に捨てた事がバレる気がして捨てられなかった。
けれど普通に置いておくこともできず、引き出しにしまい、鍵を閉めた上から引き出しの隙間を全て埋めた。気持ちの悪いものが出てこないように、念入りに行った。
でも今日私は引き出しの封を開けた。
女に似合わないと笑われたせいで着られなくなったお気に入りの白いワンピースを着て、ブスと言われ続けた顔をメイクで彩り、引っ張られた髪を綺麗に整え、仕上げにボディミストを吹き付ける。久しぶりに見た目を整えたからか、母は驚いた顔で私を見ていた。
向かう先は、小学校の同窓会。
あの女は当時と変わらない下品な笑い声を上げていた。女は私を見つけると駆け寄り手を繋ぐ。あぁ気持ち悪い。触らないでくれ。 

「元気だった?」
そんなわけ、ないだろう。

「久しぶりに会えてめっちゃ嬉しい!」
相変わらず何も考えてないんだな。

「てかほんと小学生の頃と変わんないね!変わっちゃった子もいたから、美穂がそのままで私超嬉しいんだけど!」
そうだね、私もお前が変わってなくて嬉しいよ。

<< これで心置きなくお前を殺せる>>

私は肩にかけていたバックから包丁を取り出し、女の腹を刺した。
周りから悲鳴と怒号が聞こえる。
でも今の私にはそんなものどうだっていい。
何度も何度も女を刺した。
私を殴った手も、足も、醜い音しか出せない喉も全て。
最初は抵抗し、呻き声をあげていた女は徐々に動かなくなって最後には壊れた人形のようになっていた。
お気に入りの白いワンピースは真っ赤になってしまった。メイクも落ちたし、髪もぐしゃぐしゃ。
でももう私を苦しめた女はこの世にいない。
もう二度とこの女の面影に怯える事はない。
遠くからパトカーのサイレンが聞こえる。
私は女の死体の横に寝転がり安堵感と共に眠りについた。

【『今日夕方六時ごろ、女性が刺されたと通報が入り近くの病院へ救急搬送されました。女性は搬送先の病院で死亡が確認され、警察は殺人容疑で長濱美穂容疑者の身柄を確保しましたを長濱容疑者は被害者女性の小学生の頃の同級生の女で長年引きこもり状態だったようです』

〜殺害された女性について知人の男性は〜
『恨みを買うような人ではなかったと思います。とても明るくていい人で…すごく悲しい』
〜加害者について近所に住む女性は〜
『ずっと引きこもっていたみたいで。子供の頃から挨拶をしなかったり暗い子というイメージはありました』

『次のニュースです』】

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