子連れに「やさしい」の真意

娘が1〜2歳だっただろうか、「子連れにやさしい」と言われるキッズカフェに出かけた時の話。キッズメニュー充実、プレイルーム、授乳・オムツ替えスペースもあるという。

喜んで出かけ、噂通り子供を迎える設備や工夫が素晴らしかったのだけれど、注文で躓いた。

子供向けの飲み物がジュースのみ。いや、それについてはお店のセレクトだからあれこれ言うつもりはない。当時の娘はジュースの酸味が苦手でお茶しか飲むことができなかったので、大人のスイーツとドリンクもお願いした上で、「子供に持参したお茶を飲ませていいですか?」とお店の方に尋ねた。


「ご持参されたもののご飲食はご遠慮ください」

(うんうん、食中毒の懸念とかあるもんね。)「じゃあお水は頂けますか?」

「お子様向けのお飲み物をご注文頂けませんか?」

すみません、子供がジュースを飲めないので・・・とお詫びすると「少々お待ちください」と奥へ何やら確認に行ったお店のお姉さん。

しばらくして戻られると「やはりご注文頂けますでしょうか。お子様向けにお水のご用意はございませんので」

しかしそうは言ってもジュースは飲めないので、ノンカフェインと書いてあるお茶を頼もうとしたら、「こちらは大人の方向けのメニューですのでお子様はご注文頂けません」と・・・。

水ではなく、ジュース(しかもパックされたものをそのまま提供しているスタイル)のみを乳幼児用のドリンクとしているのにもちろん意味がある。衛生面や中毒の回避が最も大きい理由だろう。なので、徹底した管理をしているという点では素晴らしく、良い店とも言えるのだ。

結局、子供向けのジュースを注文して(結果ほとんど飲まず)、モヤモヤとしたやるせなさを抱えながら店を後にした。


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ケースは変わるが、子供向けに誂えられたサービスの中には、そこから逸脱した瞬間、重箱の隅をつつくように攻撃されることもある。

電車の中でのベビーカー論争もまさにそうで、ベビーカー優先スペースが出来て以降、別の車両でベビーカーを畳まずに乗車したところ注意されたという話を聞いた(その方は下車する駅でエレベーターやエスカレーターが近い車両に乗りたかった)。もちろん混雑などの状況に応じて畳むかそのままかは決めたらいいと思うのだが、上記のような、例外を許さないという頑なな第三者は、少なくともベビーカー優先スペースを作らなければ登場しなかった人物だと思う。

「そちらを優先するルールを作ってあげた」んだからその「やさしさ」を正しく享受せよ、と押し付けるのは本当のやさしさなんだろうか?

ちなみに経験上、子連れでの外食に関して言えば昔ながらのおうどん屋さんや定食屋さんの方が、かえって気が楽かもしれない。気取らないし、明確なルールもないし。でも、お店の人もお客さんもそれぞれに自分が「気持ちよく美味しく」食べられるように要求を出したり出されたり。ルールに接客してもらうんじゃなくて、ちゃんと人に接客してもらっているような気がするのだ。


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私も雑貨の店を営んでいる身であり、お子様連れのお客様とたくさん接する中で、トラブルはゼロではない。その度に犯人探しをして原因を追求し、一部の行為を禁止することは容易だ。

しかし、理想を言えば「お互いさま」の精神や人と人との助け合いが循環するような店づくりがしたい。そのためには、ご来店される方にも買い物をする上でのマナーがあるべきだし、こちらにもそのマナーを理解してもらえるようなアプローチが必要となる。アプローチの出し方が、時に難しい。

少なくとも、ルールが接客をするのではなく、私という人間が接客をする店にしたいと、いつも思っている。


(おわり)

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