夢野久作『少女地獄』

夢野久作と聞くと、『ドグラ・マグラ』を思い浮かべる人が多いのではないか? 難解、不可解と言われる長い小説だ。

わたしも高校時代、文学にかぶれていたとき、あの角川文庫の扇情的な表紙の本を買うことができず、なんだかイケナイモノを見るような気持ちで本屋でこっそり立ち読みしたのを覚えている。わけのわからないことが書いてあったような気もするし、そうだったのか確信できない。

同じ頃、江戸川乱歩の短編をよく読んでいたのでそれほど強烈な印象を受けなかったのかもしれない。江戸川乱歩は、考えていることがちょっと理解できない、というタイプの作家代表だし。

ところで『青空文庫』というものをご存知だろうか? 著作権の切れた文学作品などを集めてある「インターネット上の電子図書館」である。そこから無料でいろんな作品を読むことができる。わたしがかぶれていた時にお小遣いで買った太宰の『斜陽』や『マザーグース』なども。初めて見るとビックリすると思う。突然目の前に大きな山塊が現れたように。

以前、スマホで読みに行ったことがあったのだが、文字が小さくて読みにくかった。それ切りだったのだけど、小説を書くためのエディタアプリを探していた時に、青空文庫のビューワーが何種類かあることを知り、この度、試しにそのうちのひとつをインストールしてみた。

いくつかあるアプリのうち、DL数の大きいものを選んだつもりだが、あの読みにくかったファイルが、スマホに最適な文字サイズの電子書籍に。もちろん、フォントサイズは好みによって変えられるらしい。

本当はラノベサイトで作品公開しているんだからラノベを読んでしかるべきなのかもしれない。けど、好きになれないものは仕方ない。好きになれる本にめぐり会えれば読むけれど。

また『文学かぶれ』とか思われるかもしれないなぁと思いつつこれを書いている。

しかし。

文学の世界は広かった! ずっと自分の書く作品を模索していて気がつけば足元の一点しか見ていなかったんだろう。いま話題の、人気の一般文芸書は読んではいたものの、文豪ものの幅広さよ!

懐かしいタイトル、読み逃したタイトル、ちょっと読みたかったものまでたくさん! たくさん並んでいるのだ。

ちなみにうちの子は『文豪ストレイドッグス』から文豪ものに手を出し、国語の時間には電子辞書で青空文庫を読む悪い子だったらしい。お陰で知らないうちに読書量を抜かれた気がする。読書の幅は、わたしのほうがまだ上だろう。わたしは文芸書以外のものもけっこう読むので。

と、前置きが長々と長くなってしまったが、なにを読もうかなと考えたのです。しおり機能もあるようなので、読む一冊を間違えたくないなと。読み切れるものにしたいなと。

本当はビューワーを入れたら昔、いくつか読んだ泉鏡花を読みたかったのだけどあれはなかなか読みにくいのでリハビリには不向きだとパスした。

で、読者別にパラパラと見ていて目に止まったのが夢野久作。『ドグラ・マグラ』、ちゃんと読んでないし、よく覚えてもいないし、みんなが言うほどの奇書なんだろうか?

しかしよく見るとページ数(読み終わるまでの時間)が多い。これは読み切る自信が無い。好みに合うかという自信もない。そんなわけで、そう言えばこれは読んでなかったなと読むことに決めたのが『少女地獄』。『ドグラ・マグラ』が奇書であるなら、どんな地獄が描かれているんだろう?

読み進めてみると、中はいくつかの短編でした。分野はミステリー! 湊かなえさんがちょうど書きそうな感じ。わたしの中では湊かなえさんがビビッと来る。

どれも、「少女」が主題の話。

ちなみに文体は個性的ではあったけれども読みにくくはなかったです。文豪ものはそこが心配ですよね? 当て字、多いルビ、よくわからない熟語……。

『少女地獄』はその辺は問題なく、かえってわたしには新しい表現方法として興味深く思えました。「私」ではなく女性の一人称は「妾」。独特な趣がありますよね。

よかったら、ご一読ください。

わたしは次はなにを読もうかな。太宰も谷崎も宮沢賢治もあるんだから、目いっぱい目移りして決めようと思います。


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