やさしさのまほう

女の子は

目の前にいる、ともだちをみて思いました



ーもっと、自信をもったらいいのに。

じぶんの感じたこと、言うことを信じて、いいのに

そんな、ウソっぽい相槌やめていいのに。





じぶんに自信のなさそうな女の子をみて

女の子はそんなことを感じました。


そのともだちを、優しさをもって

見つめてあげたかったけれど

とてもじゃないけど

そんなことはできませんでした。


むしろ、だんだんと

怒りのキモチが湧いてきます


自信のなさそうなその子の表情に

女の子は一緒にいるのが苦しくなり

その場を離れました。



道を歩いていくと
向こうから
大好きな男の子がやってきました


あいさつをし、はなしをし
ふたりは一緒に遊ぶことに

手を繋ぎ道を進みます
楽しいはなしに気分もいつのまにか
明るくなって



美味しいカレーをたべようか。と
カレー屋さんへ向かうことにしました




すると、
道の向こうから
今度は別の友達がやってきました





女の子は
まっすぐ男の子とふたり
カレー屋さんに向かいたかったけれど
男の子は友達と
楽しそうにはなしをはじめました





すこしの間
女の子はそれをみていましたが
なんだかとても寂しくなって
ふたりのソバを離れて
カレー屋さんへの道を
ひとり歩きはじめました





ーどうせ、わたしなんかひつようないんだ。





女の子は
ポロポロと涙をながしながら
その道をすすみます





うしろから
男の子が追いかけてきて
女の子をよびとめます






ーどうしたの?






男の子が尋ねます





・・・こんなこと口にしていいんだろうか。

そう感じながらも、感じたことを

はなしてみました




ーせっかくあなたと楽しいじかんだったのに
ジャマされた感じがしてとても、嫌だったの

友達とふたり楽しくはなしているから
じぶんはいないほうがいいんじゃないかと思って・・。




ーそう感じたんだね。




そういうと
男の子は優しく抱きしめてくれました


涙がつぎつぎあふれます





ずっとそんなことばかり
思ってきました




あの人にとっても
この人にとっても
セカイにとっても
別にじぶんはひつようないんじゃないか・・。


じぶんはそんざいしないほうがいいんじゃないか・・。



しばらく泣きつづけていると
さっきの友達がやってきました


男の子は女の子から離れて
女の子がさっきはなしたことを
友達にはなしました




それをきいた友達は
冷たくいいはなちました



「バカだね」


涙がさらにあふれます




ーそうそう、そんなの知ってるよ
しってるよ。じぶんがひつようない。なんて
思いたくないのにおもってしまうから
どうしたらいいか
わからなくて苦しいんだ・・。
もう、どうしていいのかわからない。。。。。


女の子の内側が叫びます



ここにいても
きっといやがられるだけだから
道を進もう。そう思い
女の子はまた歩きはじめます




後ろから男の子も
一緒にきてくれました




ー君のココロはこんなことを
思っているのかな?




男の子がはなしてくれました


ーそう、そのとおりだとおもう




女の子は納得して安心して
この人なら。



思っていることを
はなしはじめました



一言はなして
次のコトバを口にしようとした途端に
男の子のコトバに
さえぎられました



ーあ、ごめん。なに?


男の子は
コトバをしまって
そう聞き返してくれましたが
女の子のココロは
それぽっちのことに
大きくかき乱されてしまいます




ーこの人もやっぱり聞いてくれないんだ・・・

もう、いい。
女の子は首をふり気持ちを口にするのをやめました



ーごめんね、なんだった?


男の子は何度も優しく
聞いてくれますが
口にしたところで
彼はきっとあきれるし困るだろう
それにちゃんと聞いてくれないだろうな。と
だまりつづけました



優しかった男の子も
ついにしびれを切らして




ーそういうの、めんどうくさいよ。
甘えすぎだ。



そう女の子にいいました



女の子のココロはびっくりして
また、目から涙が溢れます



ー一体、わたしはどうしたらいいの・・
これまで甘えることがこわくて
甘えることを我慢して
一体誰に涙をみせたらいいの・・
やっぱり、この人もダメだった

誰もこのまんまのわたしを
弱いわたしをうけいれてはくれない

もう、きえたいきえたいきえたい・・
きえてしまいたい・・




もっていたものを
すべて床にたたきつけて
走ってすぐそばの踏切りに
飛び込みたい



そんな衝動が
女の子の中にうまれます



でもそんなことしても
なんの解決にもならないことはわかりました



その場になんとか
ふみとどまって
涙がとまるのを待ちました



ひとしきり泣きおえると
男の子がききました


ーどうなの?



こんなこといっても
まためんどがられそうだなあ。と
女の子はまだだまりこんでいます



こんなボロボロの姿
誰にもみせたことがなくて・・
いつも優しい男の子は
女の子が涙すると
いつも優しく見守ったり
いっしょにいてくれました


そんな彼に受けいれて
もらえなかったら・・


もう誰にも
こんなじぶんうけいれて
もらえないかもしれない


でも、
わたしが生きたい世界は・・・




女の子はおもいきって
口にしてみます



ーこんなに優しくされたことなくて・・
優しくしてくれたから甘えたくなっちゃったんだ・・。



言っている途中で
涙がこぼれます


すぐにわんわん泣き始めた
女の子を男の子はぎゅっとだきしめました



ーああ、こんなに優しくされていいんだ
わたし、こんなに優しくされたいいんだ



さっき、女の子の内側に
湧いていた衝動がしずかになりました




手を繋いで
きた道を帰ります



女の子は歩きながら
感じます



昼間
ともだちに感じた
自信のなさを責めたくなるキモチは
女の子がそんなじぶんじしんを
ダメだ。と責めるキモチでした




もうひとりの友達が
女の子にいいはなった
ーバカだね。
というコトバは
女の子がじぶんをたいせつにできないコトに
対してバカだなあ。そんなこと思うの
やめようよ。と弱いじぶんを責めるキモチのあらわれでした



ボロボロのこの姿を
受けいれられない。のは
他のだれでもない、じぶんでした



ーああ、ぜんぶわたしだった



わたしがわたしじしんの
みとめられない部分を誰かの中にみたり、
じぶんを責めるきもちを
他の誰かがことばにしてみせてくれていたのでした




じゃあ、この手は・・・?
やさしい、この手は?



また、涙があふれます




ーわたし、もうじぶんに優しくしてあげても

いいのかもしれない




そっか。
そんなじぶんもいるよね。って抱きしめてあげたらいいんだ




消えたい。じしんのないじぶんはダメだ。と
思ってしまうじぶんに×をしていたから
そんな人が目の前にあらわれると
とっとと進んだらいいのに。じぶんで○にするしかないのに・・。


そう思って
目の前の人に優しくできず
じぶんにするように相手を責めてきました


だけど、
抱きしめられて
この手のぬくもりに
女の子はいのちをすくわれたんだ。
それは今、ここにある事実でした





人の優しさが
人のいのちをすくうことがあるんだ


これまで

甘えたくてでもあまえられなくて

どうしようもなかったいっしょうぶんのおもいが

男の子の優しさによって

うめられた気がしました



じぶんでじぶんに優しくするしかない。と

おもってきたけれど

でもそれがなかなかできなくて

どうしていいか、

苦しかったりしたけれど

人の優しさによって

ほんとうに、いのちが救われた。

そうおもったのでした





そんなことを
感じながら、その日
女の子は眠りにつきました



翌朝目覚めると
じぶんじしんのカラダの感覚が
今までとちがうことにきがつきました




じぶんに
とっても優しくしてあげたい。
そんな感覚がうまれていました




女の子は
じぶんのカラダをやさしくなでて
抱きしめたくなりました




そして
優しくそうしてみました




じぶんじしんを
抱きしめて
女の子は感じます






ーああ、世界へのやさしさは
ここからはじまるんだ・・・!







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