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『大怪獣のあとしまつ』は本当に今世紀最大級の駄作なのか。

#今日の映画 は“今世紀最大級の駄作"として悪評高い『大怪獣のあとしまつ』(2022日115)です。これまでの怪獣映画では描かれてこなかった、怪獣が倒されたその後の死体処理にフォーカスを当てた映画です。
チョコと思って齧ったら消しゴムだったけど、これはコレで食べれなくは無い。そんな感じの映画でした。

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私がもし例えるとしたら

 「令和のデビルマン」などいろんなこと言われてたのでむしろ気になった一作ですが、かなりの癖の強さはあるけど、言われてるほど駄作ではなかったですね。
私がもし例えるとしたら、『シン・ゴジラの皮を被ったギャグマンガ日和』(?)あたりですかね(?)

これは何映画?

 まずもって、この映画はジャンルとしては、怪獣特撮映画かもしれないけど、その実態はもっとメタ的で、特撮好きが撮ったメタ=パロディコメディっぽかったです。
その点で『裸の銃を持つ男』(1988)や『ショーン・オブ・ザデット』(2004)にかなり近いですよね。
公開前情報などで、シンゴジに続く超大作怪獣映画の様な期待のされ方をして観にいった私のような人間からしたらかなりの駄作に思えるだろうし、私自身も、前半は緊張感の無いもったりとしたテンポとそれに合わせたキャスティング、寒すぎて滑りまくってるギャグや、劇内組織の現実味のカケラもない作戦行動に閉口したけど、期待していたようなSFではなくこういう種類(これ迄の怪獣映画でそういう要素が描かれてきた上での)のパロコメディだと思って観れば全然観れないことはないし、そういう意味では完成度が高くむしろ結構面白かったです。

では、なぜ駄作とされてるのか

 私は脚本・監督の三木聡氏についてあまりよく知ら無いのですが、これまでの特撮系は勿論、AKIRAやエヴァなどの80〜90年代カルチャーのパロディもそれなりに含まれていて、彼(或いは製作陣の誰か)によほどその辺が好きな人間(つまり我々の同類)がいるんだなと言うことはよく分かりました。
 ただそんな彼等によって、怪獣に対抗する組織である「特務隊」や、そこと折り合いの悪い「国防軍」らによって繰り広げられる各種の組織的な大規模作戦行動や、シンプルにかっこいい専用車両、内閣官僚とその付き人達の根回しや工作等の政治争いなど、“我々"の大好物な要素が、なまじ構造としてはそれなりの解像度で再現されてしまったばかりに、蓋を開けてみたら脱力系コメディだったわけで、そりゃボロクソに言われるよねって感じでしたね。
むしろここまでオタクを喜ばせる要素を含んでいながら、コメディに舵を切ったのは清々しいまであるし、実験的で変わり種としてはかなり面白いと思います。
ポテンシャルは滅茶苦茶高いし、“超大作”とまでは行かなくても、内容はコメディだし、キャストも豪華で、邦画ありがちな添え物としての恋愛要素もちゃんとあって、もっとパンピ受けしてもいいんじゃ無いかと思いました。 
(恋愛要素もだいぶ評判悪かったけど、私は登場人物の相関的にあれがもしなかったとしたらストーリーがだいぶ薄くなりそうなので、あっても良かったと思います。)

やっぱり庵野監督のせい

 やっぱりそんな本作が低評価の嵐なのは、2016年にあんな名作を生み出してしまった庵野監督のせいだし、今後怪獣映画はこのポスト庵野をどう乗り切るかが問題になりそうですね。
シンゴジ以前の国産ゴジラはそこからさらに12年遡るので、現代人にとって怪獣映画と言ってまず一番にあげられるのはシンゴジだろうし、怪獣映画はシンゴジとの対比を免れられないですよね。
本作は着眼点も邪道ながら面白いし、コメディとしてのポテンシャルもあるので、少なくとも後15〜20年早かったら(プレ庵野期で、もっとスタンダードな怪獣映画がバンバン出てて映画ジャンルとして一般的だった時期なら)絶対大ヒットしてたと思います。非常に惜しい。
というか、トレーラーでも庵野的なやや変わり種正統派特撮感を押しすぎなんですよね。もっと初めからパロディであることを認めて、コメディとして出していれば、こんな事故は起こらなかったと思いますね。

それはそうとしてこの映画自体もクサい

 もしこの映画の欠点を(到底令和とは思えないクオリティのVFX以外に)(多分これも予算のせいだし)挙げるとすれば、セリフから役者の動きから、演出がやたらクサいという点ですよね。
特に台詞回しの独特さは件の怪獣の腐敗臭以上の臭さで、慣れるとむしろ普通に笑えるようになるけど、まるでドリアを食べさせられている様でした。(半分褒め言葉)
調べてみると、三木監督は舞台作家もされてるらしく、それを知ったらやや緩めなテンポや動きや台詞のクセの強さもかなり納得できました。
むしろ三木監督の他作も観てみたいですね。

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