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DAOKO×岡村靖幸『ステップアップLOVE』の歌詞だけでご飯三杯はいける

突然だが、岡村靖幸が大好きである。

昔からというわけではなく、ごく最近になって好きになったので、筋金入りのファンの方からしたら、初心者も初心者である。まだまだ知らないことも多い。

とはいえ、『あの娘ぼくがロングシュート決めたらどんな顔するだろう』や『だいすき』といった80年代〜90年代にかけてのよく知られた楽曲も、『ビバナミダ』や『マクガフィン』といったごく最近の楽曲も、新鮮にフラットに楽しめているので、これはこれでいい状態かな、と思っている。

さて、この岡村靖幸がDAOKOと共同制作した『ステップアップLOVE』という楽曲。これは、アニメ『血界戦線 & BEYOND』(シリーズ2期)のエンディングのために作られたものである。この『血界戦線』シリーズが大好きなこともあり、岡村靖幸楽曲の中でも、個人的ベスト3に入る。

で、今日も今日とてアニメ『血界戦線 & BEYOND』をなんとなく流してみていて、エンディングを聴いていたのだけど、その時(いまさらながら、ではあるが)歌詞の「仕掛け」に気づいた。

いや、狙ってやっているかどうかはわからない。ただ、おそらくこの「仕掛け」のおかげで、聴いていて心地よい感じになるのではないか。

それは何かというと、1番の歌詞、岡村靖幸が歌うBメロ部分。

歪んでも 滲んでも
Every Day Every Night
まだつかめない

ここの冒頭、「ゆがんでも」が音感として「You Got It」を含ませているのではないか?日本語と英語の歌詞が共存しつつも自然に聴こえるし、洋楽などでよく耳にする英語のフレーズが、楽曲のノリを加速させる。

さらにこのあと繰り返されるBメロの次の歌詞。

油断して 汚れて
Come On Baby 身勝手な
現実を引き裂いていけ

こちらの冒頭、今度は「ゆだんして」は音感として「You Are Done」を含ませている感じ。もちろん先ほどの「ゆがん」と頭韻、とまではいかないが呼応している。

そこまで深読みしなくとも、単純に濁点がつく言葉が並ぶことによって、フレーズにビートが生まれている。

そう、濁点ということに注目すれば、1番の歌詞、DAOKOが歌うAメロで最初に出てくる歌詞は、こうだ。

悲しいなら 笑って
切ないなら 笑って

逆に全く濁点を含まないフレーズ。おそらくこの対比が、両者のパートそれぞれのグルーヴ感の個性や、さらにはこの二人のこの歌の中での人格の対比にもなっているのではないか。

二人の対比という話でいうと、2番ののち、CメロでDAOKOと岡村靖幸が交互に歌うのだが、そこの歌詞はこうだ(奇数行をDAOKOが、偶数行を岡村靖幸が歌う)。

どきどきしすぎて話せない
まだ15の子くらいの大切な心
フィジカル面ならまかせたい
弊害害ないより燃えちゃうよね

DAOKOパートは、スクエアな四つ打ちリズムに乗せて、岡村靖幸パートは、アウフタクトありありの横ノリのグルーヴに乗せて歌われる。ここでも対比が効いている。そして歌詞も、四つ打ちリズムには「どきどき」「フィジカル」という1、3拍目にアクセントのある言葉を乗せ、リズムと呼応させている。

二人のインタビュー記事によると、制作背景として、岡村靖幸の書いた曲に、DAOKOが歌詞を書いてきて、それをさらに共同作業で練り上げていったようだ。おそらく私が想像するより緻密な計算(そして直感)がなされていると思うし、歌詞を読み込めばさらに他の「仕掛け」も見つかりそうだ。

そんなわけで、今日のエッセイのタイトルである。

DAOKO×岡村靖幸『ステップアップLOVE』の歌詞だけでご飯三杯はいけます。おそらく。

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