一首評:山田富士郎「木葉木兎党」より
「橋脚をうつ」ものはどちらなのだろう、とずっと考えている。
この短歌はおそらく冬の新潟、しかも信濃川か関屋分水路、阿賀野川の河口近くの光景なのではないかと思う。
舞台が新潟ではないかと思うのは、作者の山田富士郎が(この短歌を詠んだ時期は)新潟在住であることはもちろん、この短歌を含む連作「木葉木菟党」には、冬の新潟を思わせる短歌がいくつか見られるからだ。
わたしも新潟出身であるため、冬の新潟の光景は記憶に強く残っている。冬になると、海は荒れ、河口を「さかのぼる」ように波が