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ブランチとコヒーレント (13)

2022年5月のブランチ

5月、去年よりもゆるく外出できるゴールデンウィーク。ねこさんと出会って丁度1年が経った。
振り返ってみると、以前はひと月に1回姿を見れれば上出来だったのに、今は週に1回は多少の会話を交わすほどになり、より身近な存在に変化している。

互いにそれぞれの趣味趣向はなんとなくわかってきているものの、相通じるものは無い。それゆえねこさんが興味を持つものは自分にとっては新鮮で、話を聞いていると色々発見がある。

Music Bar Cordaでは、音楽の話が楽しい。
自分が知らない世界が次々と出てくる。



ヤなことそっとミュート。グランジの香りを残しつつもアイドル風味。楽曲は歪んだギターと切ないメロディが絶品。バンドセットで聴きたい。

スマッシングパンプキンズ。解説不要。

花ト散るらん。和風テイストとタイトなリズムがとにかくカッコいい。ライブ観たら終わりは心地よいクタクタが得られそう。

ホルストの惑星。自分は冨田勲が入り口。気になる所がありすぎて、フルオーケストラ譜を買ってしまったくらい好き。

MO'SOME TONEBENDER。今の若者はこんなカッコいい事をさらっとやってのけてしまうのですよね。自分は絶対真似できない、悔しいけどカッコいい。

発見した。我儘ラキア。
ラフでハードな演出も、くさった諦めは微塵もない、いつも前のめり。
自分を叱咤するときにはいつもこれを。

そういや若い頃、音楽に触れるのはTVかラジオか、はたまたCD屋さんの店頭デモか…そうでなければ人からのお勧め。

昔、自由が丘の宅配ピザ屋でバイトしていた時。配達先のボロアパートの玄関先にウッドベースが立ててあった。ベースですかと声をかけると、そのひょろっとしてちょっと無精髭が生えた背が高く腕の長い男性、バンドをやっていると。そうだ、と呟いて部屋に戻り手に持ってきたのはカセットテープ一つ。

「オリジナル曲ですか?」
「いや、Sting。あげる。」

ありがとうございます、と受け取る。
ふと顔を上げると、半端に開いた引き戸の向こう側には横になって寝ている裸の男性の背中から折り曲げた太ももやすねが見えた。奥の窓から差す陽の光を浴びて、無骨な線ながらも逆光の線が白く輝いていた。

見てはあかんと気づかないふりをしながら目線を落としたら、自分が立つ玄関には、踵がちょっと厚めで鈍く光る黒い革靴と、くたびれたコンバースのハイカットが隅に並んでいた。

なんでピザ屋の配達員にこれを渡そうと思ったのか今でも謎。見た目ハードロック崩れ中学生風味の自分とは縁のない曲だったけど、学校のレポートを書いている時なんかに流していて、当時のお気に入りになった。この時からAOR、アダルト コンテンポラリーにも耳を傾けるようになった。



今は検索して結果から直接楽曲を聞いたり、サブスク配信で流し聴きという出会い方がある。これはもの凄い違い。音楽を聴く側からすると幅は圧倒的に広がる。

恐らく音楽で商売する人達にとってもこれは大きな違いで、駆け出しアーティストやマイナーなジャンルを住処とする人達には初期投資を押さえながらスタートできる。一方で、沢山の中に埋もれてしまい、プロモーションの難易度は依然として高いだろう。本質的には楽曲の完成度やユニークさが求められ、しかもそれが何か大きなモノへ繋がっていく必要がある。

我らが燎は今のところ曲毎にキャラクターが異なり定まっていない。演者のねこさん果南さんはブリブリ可愛い永遠の17歳です、みたいな感じでも無いし、アーティスティックな一面も必要になるだろう。ねこさんを独り占めしてみたいなんて気持ちあるでしょと問われたら否定はできないけど、ステージで輝いているねこさんはもっと見てみたい。

自分が何か他者に影響を与えられるとは到底思えないのだけど、良いものの良いと表現できるようになりたいね。

燎のライブは順調に数を重ねる。しかし仕事で行けず。
仕事を詰めるために会社が熱海にホテルを確保してくれて、そこで集中という名の拘束。

仕事を詰めに詰めて解放された翌週、憂さを晴らすかの様にライブに参戦。

5月23日、amuLseライブ、メンバーのめいさんミヤさんの生誕。燎とほぼ同時期にデビューした、ちょっとだけ先輩アイドルグループ。燎のデビューライブにも参加していて、何かと縁がある。平成初期あたりの香りのする、ロック風味のポップチューン。懐かしい感じと相まって自分に馴染む曲が多い。

https://twitter.com/amuLse_official

当日夕方までは仕事で行けない状況だったけど、とりあえず一旦仕事は切り上げられて、走ればギリギリ間に合うかも。前売り券は売り切れの告知があり、当日券は出るかわからない。けどギャンブルで秋葉原まで猛ダッシュ。

途中で当日券ありとの告知。よかった。燎は2回の出番があるも、1回目の出番が終わった後に現場に到着。ここで初めて声を出して観客が応援する姿を見る。なるほど、声出し禁止時の手拍子はこの声出しの代わりだったのか。

燎もこれから声出し可能なライブが増えるはず。そうなった時、誰もリードする人がいないとなると、これは厳しそうだ。といって自分がなっている姿は想像が全くつかない。どうしたら良いのだろう。

物販でねこさんとお話ししたかったのだけど、仕事で後ろ髪が引きちぎれそうなまま撤収。仕事を片付けて今日のライブを振り返る。

同時に音楽を聴くだけでなく演奏にも興味が再び沸き始め、25年ぶりにギターを触り始める。左手の指の先が久しぶりに痛い。

自分にはリズム感とか音感とか、音楽が好きなのにそういうものが全く存在しない。昔嫁さんとパラッパラッパーとかリズム天国とかやったけど、いつもリズム感の悪さをちくりちくりとつつかれてた。知ってるよそんなの、いちいち口に出さなくてもいいじゃん。

5月24日、新宿ReNY再び。
デビュー時よりも振りがなめらかになったか、綺麗なポージングになってきたのか、ステージに合わせてフォーメーションの調整ができるのか。理由は良くわからないけど、うわ、ステージ広い、という感じが無かった。

燎の二人は着実に稼働領域を広げてきている。なんとかしてファンを増やせないか。自分に何ができるわけではないけど、メジャーになっていくアイドルはどんな路線を辿っていくのか、過去の事例を辿ってみようか。

それにしても新宿ReNYは大きい。これくらいの箱をファンで埋めて、ここまで来たんだねって二人と話せたら感慨深いだろうな。

ねこさんから色々情報は得るのだけど、会話は相変わらず成立しない。他のお客さんとねこさんは良く話しているし笑顔。順にお客さんを巡ってと談笑しているようでいて、自分のところにはこない。配膳の時にちょろっと話すにしても、会話は1往復で終わる。目は笑っていない。

なんだろうなぁ、自分、意識しすぎているのだろうか。
音楽にしても何にしても、自分は世のことわりがまだ見えていないね。

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