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『旅路』楽曲の素晴らしさの秘密。

『旅路』を楽曲面から解説している方はたくさんいて、今さら私ごときが何を言うことがあろうか、とも思うのだけど、備忘録というか自分のために書いておくので、お時間ある方は良かったらご覧ください。

歌詞のわりに元気なアレンジ

1本前の記事ではこの歌の歌詞について書いた。

ダラダラ書いたが、要するに達観しているというか、老成してるというか、23歳にしてその死生観は何なんw?というようなことだ。
それを踏まえてあらためて曲を聴くと、そんな歌詞のわりにドラムが大きくパキパキ聴こえる。
歌詞だけでなく、このメロディアスな美しい旋律、そしてコード。
普通、そういう場合はもう少し静かなアレンジにしたくならないだろうか。
でも、この曲結構ドラムがすごく目立つ。イントロなんて行進曲みたい。
風さんの得意なピアノは控えめで簡単にコードを押さえるくらい。
普通、めちゃくちゃメロウなピアノソロとか入れたくならないだろうか。

アレンジは歌詞と比べてどうなん?

音楽解説動画の中で、特に好きな「だけじゃないチャンネル」さんというチャンネルがある。
3人の若い男性が、風さんをはじめ、洋楽邦楽を問わず様々なジャンルの音楽を取り上げ、専門的視点で分かりやすく解説してくれる。
しかも、3人がとても仲良く、明るく、とにかく楽しい!

つい最近このチャンネルでも、リリースしたばかりの『旅路』を取り上げてくれた。
なんせ、3人とも大の風さんファンだから!
その中で出てきたキーワードが『チルさ』。
もうね、私のようなオバチャンには新しいワードはいちいち調べないと分からないの。
『エモい』は、やっと自分のものにしたばかりなのに、今度は『チルい』。
早速調べると「もともとはヒップホップ用語で「まったりした」とか「くつろいだ」というような意味らしい。
たしかに『旅路』は全体を通してとても心地よくてまったりしている。
先ほど書いたように、イントロだけ聴くとなんだか行進曲のようでもあるのだが、歌が始まった途端、歌い方といいドラムの音といい、ほんの気持ち程度間延びしたようなモタッているような感じがする。
この辺の説明も『だけチャン』で詳しくしてくれているので興味のある方はどうぞ。

何度も言うが、歌詞の内容やメロディアスな曲からいくと、ドラムなどをここまで目立たせず、もっとバラード色全開でもいいはずなのだ。
それをあえて、ドラムを若干重くもたらせ(しかも打ち込み)ヒップホップの感じがすごく強いのである。
万人受けするものではないのだ、実は。
実際、風さんファンの中にも「どうしてこういうアレンジにしたの?」とか
「優しい歌声やギターを前に出してもっと美しく聴かせてほしかった」
「ドラム大きすぎ!」……みたいな意見も少しあるようだ。
Why?
ここからは私の勝手な解釈。

ドラマのテイストと合致

この曲はドラマ『にじいろカルテ』の主題歌。
いつもドラマの最後のほうで流れる。
とても良いヒューマンドラマだと思うし、ほぼ毎回泣かされる。
でも、脚本はどちらかというと軽快で、セリフも面白く、笑いを取りに来るところも結構多い。コメディタッチなのだ。
例が古くて歳がバレバレだけど、たとえば『不毛地帯』とか『白い巨塔』とか、そういった感じのドラマであれば、主題歌ももっとシリアスでかつ流れるような、泣きそうな感じのものが合うだろう。
でも、『にじいろカルテ』は違う。
もともと原作は漫画だし、若い人向けの軽快なストーリーの中で、時々じんわり人生の辛苦を滲ませている。
……だからじゃない?
風さんはしっかり脚本を読み込んで、制作現場にも足を運んでドラマのことをよく研究した上で、この初めてのタイアップ曲を仕上げたという。
ドラマのテイストに沿ったんじゃない
これが私の結論。

若者たちへの人生の応援歌

それともう一つ。
報道ステーションで後輩高校生たちへ向けてのメッセージを発したように、この曲は若い人たちの旅立ちの日にピッタリなのだ。
ずっと同じところにとどまることはなく全てが変わっていく人生だけれど、愛し愛され歩いていこうよというエールなのだ
しっとりしすぎでは合わないではないか。
報道ステーションでピアノの弾き語りをした時には、風さんお得意のピアノが炸裂し、ジャジーでありながらピアノの打楽器としての側面もしっかり強調され、「チルさ」よりもそういうメッセージ性が強く前面に出ていた。

三位一体

ここまで書いて気づいた!
このアレンジ、三位一体だ。

1.エモーショナルで深い歌詞を支える美しいメロディとコード
2.全体を漂う、ドラマに寄り添う軽快さと優しさ・チルさ

3.ドラムのリズムで歩みを応援するメッセージ性

だから伝わるのだ。
一番最初に聴いたときにうっすら感じた「あれ、ドラム大きくない?」というような違和感はすぐに消えて、聴くごとにしっくり来て、そして毎回届く風さんの想いに泣けてくる。
少なくとも私は。(ついでに言うと夫も……みたいだ。ww)
結論、アレンジ絶妙!

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