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絶対音階派 vs 相対音階派

私の妻は幼少からピアノに親しんだ。今も自宅でピアノを教え、並行してヴァイオリン、フルート、声楽の伴奏をし、ジャズやフォークバンド活動をしている。

彼女の頭の中で「音階」とは「絶対音階」を意味する。

一方、いや、「音階」といえば「相対音階」でしょ、という人もいるのだ。私もその一人だ。

たとえば私が、ト長調の歌の、ドレミ(=相対音階)について語るとき、彼女は、「ああ、ソシレ(=絶対音階)ね」って言う。ここで既にコミュニケーションギャップが生じる。

私はギターでコードを覚え、歌の伴奏をする時どんな調でも常に譜面通りではなく、ドレミファソラシドに換えて頭の中で判断する「移動ド」派、つまり相対音階派なのだ。

「相対音階派」は、歌や合唱など声楽系に多い傾向みたいだ。だって、色々な調でも、要するにドレミファソラシドの世界なんだから、譜面で基本となる音が違っても、ドレミファで歌えば楽じゃん、って思う。

が、器楽奏者の考えは違う。彼らにとって、たとえばハ長調のソの音が、ト長調でドに成り代わる「移動ド派」の考えが理解できない。だって、ソ(つまりG)はソなのである。

未熟な私は音を判断する際に、Aの音(つまりラ)を基調にして音を確かめた上、転調した調でドレミファソラシドを頭で考えるしかない。だが絶対音階派の人々はいきなり音がわかってしまう。すごい!というか、うらやましいというか、ある意味、化け物ではないか?とさえ思う。

面白いお話を紹介しましょう。

ベートーヴェンが、ある演奏会にのぞんだ時、会場のピアノの調律が半音低いことがわかった。一大事だ!

その日のプログラムは「ホルン・ソナタ」(ホルンとピアノのためのソナタ)。

ベートーヴェンが「しょうがねーな」とつぶやいたか定かでないが(笑)、彼はピアノパートを自ら半音上げて弾き、リハと本番の演奏をしたというのだ。

こんな話を聞くと、ベートーヴェンは絶対音階派であったのだと個人的には勝手に納得するのである。まあ、ベートーヴェンですからね。「絶対音階」とか「相対音階」なんてどーでも良くなります。


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