マイ・リトル・タウン My Little Town
「マイ・リトル・タウン My Little Town」
アルバム 「時の流れに」 第2曲 1975年
サイモン&ガーファンクルの歌として、ポール・サイモンとアート・ガーファンクル各々のソロアルバムに収録された「マイ・リトル・タウン(My Little Town)」。でも、聞こえてきた曲は、S&Gのサウンドではない全く別のサウンドでした。
ピアノ低音部をまるで打楽器のように使用した印象的なイントロが力強いです。アコースティックギターのストロークは入り、厚みのある二人の声が聞こえてきます。
God keeps His eye on us allの箇所でハーモニーが聞こえ、特に感動したことを覚えています。それにしてもいきなりフェイントともいえるコード進行。印象的な転調に続き、to the wallで、最初のコードに戻るあたりで妙な安心感を覚えます。
ポール・サイモンの音楽の変化
ところが Coming home after school では今度は変則リズムです。
こういう音楽展開をポールは以前しなかった。明らかにソロ活動以後のポール・サイモンの味が出ていると、わずかここまでの展開でわかるのです。
僕らのシャツを汚い風(dirty breeze)にママが干していたという光景は、映画のようです。またこの箇所のハーモニーの美しさはさすがサイモン&ガーファンクルですね。次のフレーズも虹が見えるようです。イマジネーションの箇所の三拍子も、曲に変化を与え新鮮です。
虹が黒く見えた。しかもそれはイマジネーションの欠如とは、よほど空が汚かったのか、それとも主人公の心に色というものがなかったのか。
死人と死にかけの人間しかいない町
そして歌のサビ、というかこの歌の主題といってもよい次の箇所の意味。重い意味です。死人と死にかけの人間しかいない町。世界のどこかにはこんな町がまだ多く存在するでしょう。一方実際の生死の意味ではなくとも、死というものを、別の事柄に置き換えて見てみると、考えさせられます。二人の歌いぶりも、より一層力がこもっています。
主人公は栄光を夢見て成長していきます。おそらく彼はこの町を出て、人生を送っているのでしょう。でも、自分の故郷に戻ってきて、懐かしさと同時に、何も変わっていない絶望感の、ふたつの気持ちが交差します。そして、少年時代の思いを、再び思い起こしているのです。
やるせない心は力に変わり夢へ向かう
哀しい。ハーモニーが美しいだけになおさらその哀しさが強調されています。しかしSaving my money Dreaming of gloryの部分のやるせなさは
力となって Twitching like a finger On the trigger of a gunという夢へと進むのです。少年の希望はどこへ向かっていったのか?ターゲットめがけて
走り続けられたのでしょうか。
今も変わらない故郷にうんざりしながらも、何も変わっちゃいない故郷に安堵する複雑な気持ちは、最後のフレーズにこめられているような気がします。
巧みな詩とダイナミックなメロディ、アレンジが金字塔を生んだ
抑圧され一歩間違えば爆発しかねない少年時代の精神状態、そして将来への不安と希望、郷愁、母への愛など、さまざまな要素を短い言葉を使って、巧みに表現するポールの詩。
この歌こそサイモン&ガーファンクルで歌うべきだと判断し提案したアートの優れた洞察力。ダイナミックなメロディとアレンジによる重厚なサウンド。そして忘れてならない二人の絶妙なハーモニーとヴォーカル。
「マイ・リトル・タウン My Little Town」はサイモン&ガーファンクルという枠を超え、ポール・サイモンとアート・ガーファンクルという二人のアーチストの優れた共同作業による金字塔といえるでしょう。
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