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『松本隆 言葉の教室』

"夕日を言葉にしてごらん 世界が一変するよ”

そんな冒頭ではじまる本書。夕日には、どんな言葉が合うだろう。「今日もいちにち」「さようなら」「また明日」。今ぱっと浮かんだのはこの3つ。

日が落ちるまでのわずかな時間、色が少しずつ変わっていく。確実に夜に向かっていくマジックアワー。夕日は魔法の手前の時間。「こちらからあちらへ」。

夕日についてをいろいろと考えてみる、浮かんでくる言葉について考えてみる。言ってみる、書いてみる、眺めてみる。それは夕日を眼の前にするほどに雄弁ではないけれど、次に夕日を見たときには何か新しい発見があるかもしれないと、少し嬉しくなる。


著者は「余白の大切さ」を言う。書きすぎないこと。説明しすぎず、間や隙間が大事、と。明るく照らしすぎない。陰影を楽しむ心持ち。そこに、聞き手や読み手の想像が膨らむ余地がある。

実際に詞を書く行為は、普段はあまりすることはないけれど、「詞のモード」というのがある。声に出して歌われるとするならば響きや音の数も重要になり、俳句的な思考が必要になってくる。うまくいかないときはなかなか難しいのだけれど、時にするっと詞が浮かび、思いがけない響きを醸すことがある。

言葉は経験した事柄から紡ぎ出されていく。視点と距離、光と影、リズムとバランスと美意識を巧みにする。詩のアンテナは常に張り、磨いておきたい。


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