見出し画像

芸能マネージャーの贈る業界仕込みの『音楽ビジネスって一体どーなってるの!?』(著作権ビジネス 編)

こんにちは。musicmannです。

先日、Dancer(だんさー)さん(@dancer_karaoke)とtwitterでやり取りをさせて頂いて、


普段何気なく聞いている音楽はどんな権利があってビジネスになっているのか、だんさーさんのようにご自分で勉強されて音楽に関するビジネスをしている方以外のユーザーには見えづらい部分かなと思い、今回はいつものようなnoteではなく音楽業界にも関わって仕事している僕の視点から「音楽の権利ビジネスとは」について基本的な部分を分かりやすく説明して見たいなと思います。

音楽業界で働きたい人も是非読んで見てくださいね。

さて早速ですが、音楽の権利というと何を皆さん思うかべますか??

なんとなく「音楽の権利=著作権=JASRAC=悪」みたいなイメージではありませんか?笑
でも実はJASRACが何をしているかよくわからない。
そんな感じだと思います。

著作権ビジネスの初回ということで無料公開します。


今回の内容は「著作権」「著作隣接権」の違いについて説明し、著作権サイドのビジネスについて説明しますね。


今後には、


・著作隣接権ビジネスとしてレコード会社のビジネス展開
・プロダククション(事務所)とレコード会社の関係
・apple musicやspotifyのような新サービスの権利処理
・音楽だけでなく映画やアニメ等の製作委員会型ビジネス


などを書いてみたいと思っています。


それでは早速今回の目次を見て見ましょう。


【目次】
・著作権と著作隣接権???
・音楽出版社とJASRACの違いとは
・音楽出版社は何するところ!?
・JASRAC以外に著作権を管理している団体はないの??



<著作権と著作隣接権???>

「著作権は聞いたことあるけど著作隣接権は初めて聞いた!」って人がほとんどかと思います。

シンプルに言うと、


・著作権 = 曲や歌詞を作った人の権利(作曲家・作詞家)
・著作隣接権 = 曲や詞を実際に歌う人(アーティスト)やそれを録音する人(レコード製作者=大体レコード会社)の権利

(もっと詳しく言うと放送事業者にも隣接権はありますがこの記事では割愛しますね)

になります。

そして音楽業界では慣習的に音楽著作権のことを「出版」と呼びます。
音楽の仕事をしていて「出版社」と言うと、書籍の出版社ではなく「音楽出版社」の事を指します。

ちなみに著作隣接権のことを音楽業界では「原盤」と表現します。
原盤とはアーティストの実演を録音(固定)したもので、上記の「アーティスト」と「レコード製作者=レコード会社」の両方の権利を合わせてそう表現します。


(次回(著作隣接権ビジネスとしてレコード会社のビジネス展開)に譲りますが、もう少し正確にいうとレコード製作者が実演家からその権利を譲渡を受けて録音したものが原盤です)


なので実際の仕事では著作権・著作隣接権などとは言わず、

実際の会話 → 「次回のベスト盤のM1は○○レコードからインする原盤で合ってる??ちなみに新録原盤は出版はどこ??それって原盤はうち100%??」


上記の会話を訳してみると、


「次回にうちから出すベスト盤の1曲目は、他レーベルが著作隣接権(原盤の利用権)を持っている原盤をライセンスイン(借りる)する契約で合ってる? そのベスト盤に収録する新曲はどこが著作権持ってる?(著作権管理事業者に申請しないと勝手には歌えないので知りたい) その新曲はどこかと共同で作る原盤ではなく、うちが100%お金を出して著作隣接権を持つと言う事で良いんだよね?」

という意味になります。

詳しくは次回(著作隣接権ビジネスとしてレコード会社のビジネス展開)に譲りますが、このように著作権(曲や詞を書いた人の権利)著作隣接権(それを実際に歌う、録音する)ということはそれぞれ別の権利が働くことになることを理解してください。

ちなみに著作権も著作隣接権も、他者の権利のものを絶対使ってはいけないということはなく、ちゃんと権利者に許諾を貰えば使ってokです。


許諾なく勝手に使ってしまうと、いわゆる著作権侵害になります。
なので他の人が権利を持っている場合には、その人を探して対価を払い許諾をもらうと言うのが正しい流れになります。


<音楽出版社とJASRACの違いとは>

こちらもよくごっちゃになってしまう部分だと思います。

・音楽出版社=作詞・作曲家から権利を譲渡してもらい管理とプロモーションを担当

・JASRAC=著作権管理事業者として音楽出版社から管理を信託されて許諾と徴収を担当


よく名前の出てくるJASRACは著作権の管理を音楽出版社から信託されている団体になります。


具体的に管理とは、預かっている著作権を利用したい個人や会社から申請を受ける窓口となり、規定の使用料をもらうことで「使って良いよ」と許諾を出します。つまり、許諾窓口対価の徴収ということですね。

例えばレコード会社がCDにしてリリースする場合、配信をする場合、ライブで演奏する場合などもちゃんとレコード会社はJASRACなどに申請をして許諾料を払って使用します。

許諾を出して徴収するのがお仕事なので、無許諾で使用している人がいると徴収しに行ってくれます。なので権利者からすると頼もしいパートナーとも言えます。
先日ニュースになった音楽教室からの著作権徴収問題など完璧に権利者と利用者が満足できるものではないかもしれませんが、、、。

「ちょっと待て!!そしたら音楽出版社は作曲家・作詞家から権利の譲渡を受けて、そのままそれをJASRACに信託して一体何を仕事としているのか!!」
と声が聞こえて来そうですね。笑

それでは次に音楽出版社って一体何をしているのかについて見ていきましょう。


<音楽出版社は何するところ!?>

ざっくり言うと、


「カッコ良い楽曲(曲と歌詞、またはどちらか)を見つけて来て、それを利用されるようにプロモーションして、JASRACなどから徴収された使用料をその楽曲の元の権利者である作曲家や作詞家に正しく分配する」


のがお仕事です。


音楽出版社はその楽曲の使用料が収入の柱なので、格好良い楽曲を開発・発掘して、それをとにかく利用してもらう、または最大限使用料が発生する使われ方をしてもらうことを仕事にしています。

基本的な流れは、

「アーティストに歌ってもらいヒット曲にする → その後ライブなどで定番曲として演奏してもらう → ファンや学生にカラオケで歌ってもらう。」


こんな感じで収入はそれぞれ入ってきます。

もう少し具体的に言うと、カッコ良いトラックやメロディーを書くクリエイターを探して来て契約します。
(作詞はアーティスト本人もすることがあるので今回はトラックのみの設定にしておきます)
そしてその楽曲を歌ってほしいアーティストのA&R(制作担当者)に営業(プレゼン)します。楽曲が採用されれば、次は歌詞はそれに合わせて自分で作詞するアーティストであれば自分で作詞しますし、すでにプロの作詞家による作詞が済んでいるもの(AKB48楽曲の秋元康先生)はそのまま歌うことになります。


しかし、誰でもとりあえずアーティストに歌ってもらえれば良いということはなく、どのアーティストに歌ってもらうかが超重要になります。


例えば、誰も知らない新人アーティストよりも西野カナに歌ってもらった方がCDでの使用料やその後のカラオケ利用によってもたらされる収入は上がるのは明白ですよね!笑


CD以外の利用開発は、その楽曲をパチンコ台に使ってもらったり、CMで使ってもらうように営業したりもします。

ちなみに音楽出版社はどんな会社が多いかと言うと、テレビ局の関連会社やレコード会社の関連会社が多いですかね。


テレビ局もドラマの主題歌になる曲の出版も持つことで収入を上げたり、レコード会社も自分達で出版を持つことで、CD以外のカラオケ収入などもグループ会社で見込めてるので当然の流れだと思います。

例えば、カラオケだと音楽はカラオケ会社が作った音源お客さんが歌うビジネスなので、そのオリジナル音源を使用はしていないレコード会社には1円も入りません。

僕が三代目 J Soul Brothers「R.Y.U.S.E.I.」をカラオケでいくら歌っても、そのCDをリリースしているレコード会社にはお金は入りません。その楽曲の出版を持っている会社に著作権使用料として発生します。

なのでレコード会社は自分たちでも音楽出版社を持つことで、CDの売り上げも上げながら出版の収入も合わせて取り込んでいくのが通常です。


ちなみにパチンコ台での使用は、例えば「パチンコAKB」であれば、その楽曲を管理しているJASRACなどの管理団体その原盤を持っているレコード会社の2者からそれぞれ許諾を取らないといけません。

ちなみになぜ音楽出版社が存在し、さらに著作権管理事業者が必要なのでしょうか?


素人目線で考えると、

「作曲家が自分で許諾を出して直接お金をもらえば良いではないか」

と思う人もいるかもしれません。


が、一人で作品をクリエイトし、その楽曲をプロモーションして利用を生み出し、さらに細々した許諾申請を管理し入金を管理することはよく考えれば不可能だと気づくと思います。


作曲家・作詞家は「作品を作る」ことに集中し、音楽出版社が「それを世に出す部分」を担当し、その後の利用に関する「許諾と対価の徴収」についてはJASRACなどにお願いすることで効率的に仕事を回すことができます。

ただ、中にはJASRACなどに預けず自分で管理するという手法もあります。
いわゆる自己管理楽曲というものですね。


この場合、その著作物を使いたい人はその個人または音楽出版社を探して個別に直接契約を結び許諾を受けることになります。(想像しただけもめんどうですよね。。)


ただ、やはり管理が大変になり後々JASRACなどに預けるケースも見られたりします。

それでは最後に著作権管理事業者はJASRACだけなのでしょうか?


<JASRAC以外に著作権を管理している団体はないの??>

管理楽曲の数字で言うとほとんどがJASRAC管理ではありますが、他にも管理している団体はあります。


NexToneという会社になります。


元々はイーライセンスJRCという2社が合併してNexToneになりました。


NexToneシェアは2%程度と言われていますが、その管理している約9万曲は2002年以降の楽曲で、さらにエイベックスなどの新譜も加わっていくので、著作権を利用する際はJASRACかNexToneのどちらの管理楽曲か調べて申請を出さないといけません。


当然JASRACに払う使用料はJASRAC管理楽曲の対価なので、NexToneの楽曲は別で許諾を受けなければいけません。

ただ、少しマニアックな情報を追記しておくと「演奏権」についてはまだNexToneでは環境が整っていないのでJASRACに管理を委託していますので、アーティストのライブやカラオケ、BGM使用については NexTone管理のものもJASRACから許諾をもらうことになっていると思います。

以上が著作権と著作隣接権の違い著作権を管理する音楽出版社JASRAC・NexToneなどの著作権管理事業者の紹介になります。

いつもとは違う堅い、そして長い内容のnoteになりましたが、最後までお読みいただきありがとうございました!!

無料なので是非気に入ってもらえたら、スキをつけてもらえると次回へのモチベーションになります。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?