名曲716 「Love Trip」【間宮貴子】

ーー胎内にいるかのようなすべてが優しさで包まれたものーー

【間宮貴子 / Love Trip】

 さて昔に戻ってまいりました。シティポップ。このカテゴリーを作ってくれた方には感謝しかない。おかげでいろいろなアーティストを発掘できたからだ。少し心配なのは、あと推定50~60年くらい生きるとして、全部発掘しきれたとして、これ以上の音楽ジャンルに出会えるかということである。過去の発掘は楽しいが有限なのだ。石油みたいな感覚である。

 間宮貴子は以前にも「真夜中のジョーク」で取り上げたことがある。だが本命は「Love Trip」といってもいいだろう。こちらのほうが人気が高い。といってもニッチな世界で。

 たったひとつしか世に出ていないアルバム「Love Trip」。そのタイトルと同名の曲になるわけだが、なるほどこれはしっとりとしていい。いくつかシーンを思い浮かべてみる。深夜の殺風景、真夜中のドライブの夜景に、木漏れ日が当たる休日の午後。どれも合うのだ。

 ムーディーな曲の傾向のひとつとしては、歌詞や歌声がなく、ジャズ単体でいけるものがある。むしろそれらが邪魔になるみたいな。今回もメロディーはほとんど単体でも強い。しかし間宮貴子の驚異的な美しい声が加わってとんでもない威力を残した。現代でいうところのチルである。

 シティポップの影響で徐々に人気が高まっている間宮貴子。この曲がどれだけ評価が高まるかで、今後の立ち位置も変わってきそうだ。理想は松原みきになってほしい。そのまま全世界へと。


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