名曲648 「エイトマン」【克美しげる】[エイトマン]

ーー曲に罪はない。断じてーー

【克美しげる「エイトマン」】

 『エイトマン』は1960年代を代表するアニメである。最近(といってももう10年以上前か)はフレッツ光のCMでSMAPの替え歌が有名になった。恐らく、聴けば「ああ、あの歌か」と納得する人が多いだろう。世代問わずして。

 私は珍しい幼少期を過ごしたもので、1960年代のアニソンをよく聴いていた。『うたエモン』の影響である。その中で取り上げられる曲はどれもよく覚えており、このnoteにもいくつか紹介した。

 小さい頃からすでに知識を得ていたわけだが、60年代を代表するこの曲を知ったのは遅かった。なぜか。『うたエモン』で一切取り上げられていなかったからである。それはこの曲を歌う克美しげる氏が原因だ。

 詳しくは書きたくないので省くが、氏は悪質な犯罪を犯したのだった。それでテレビ局から出演を見送られ、半ば封印されたような扱いになっていたのである。興味のある方は調べてみてほしい。

 ところがこの曲がテレビで披露されたことがある。動画も確認できた。当然、まだ事件を覚えている方が多かったため、放送後にクレームで炎上騒ぎになったそうだ。でも、歌はなかなかにうまい。

 克美しげるは2013年に75歳で亡くなった。もうこの曲が世に出ることは少ないだろう。ただ、私はしみじみと思うのである。

 いい曲じゃないか。

 この記事を書く前、改めてフルで通して聴いたのだが、途中から涙が出そうになってしまった。それは克美しげるが例の犯罪さえ犯さなければという後悔の念である。もし正当な評価をされていれば、60年代の代表曲として堂々と君臨していたに違いない。私もそうだったが、世に出せなくなって後世に知られなくなってしまうのがつらいのだ。

 ちなみに『エイトマン』そのものも原作者が銃刀法違反で捕まったので世に出しづらくなっている。実写映画も後に作られたが大コケした。「エイトマンの呪い」なんて言葉があるほど、いろいろヤバい。

 しかし私の父は子どものころ、非常に楽しんでいたそうで、思入れが強いようだ。60代以上の方は同じ思いがある人も多いのではないか。そう、作品、歌に罪はないのである。あの頃のきらめきがこのような形で失われていくのはとても切ない。

       【今日の名歌詞】

光る海 光る大空 光る大地 ゆこう無限の地平線

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