名曲446 「白い恋人達」【桑田佳祐】

ーー天才が作った本気の冬曲はすべての景色を雪景色にするーー

【桑田佳祐 – 白い恋人達(Full ver.)】

 桑田佳祐の冬曲といえば、まず思い浮かびそうなのがこれじゃないだろうか。知名度は軽く100%でしょう。えっ、知らない?……青いな。

 2001年に衝撃の曲がリリースされたといっても過言ではない。当時まだ幼かった私も好きになった曲である。桑田佳祐といえばサザンオールスターズ。なんとなく夏の人のイメージがあったのだが、この曲によってそれは覆されたといっていい。MVのピアノを弾く桑田佳祐がなんとも格好よかった。クールな一面にノックアウトであった。

 そりゃ広瀬香美が夏の曲を作ったりTUBEが冬の曲を作ったりすればいい曲はできるだろう。しかし、しかしである。これほどの強烈な名曲、いや神曲を作り上げることができるだろうか。そう思った私は改めて桑田佳祐を天才と評すわけである。

{夜に向かって雪が降り積もると 悲しみがそっと胸にこみ上げる 涙で心の灯を消して 通り過ぎてゆく季節を見ていた}

{外はため息さえ凍りついて 冬枯れの街路樹に風が泣く あの赤レンガの停車場で 二度と帰らない誰かを待ってる Woo…}

 ため息が凍りついて風が泣く街。その文字群を見るだけで寒さが伝わってくる。

{今宵涙こらえて奏でる愛のSerenade 今も忘れない恋の歌 雪よもう一度だけこのときめきをCelebrate ひとり泣き濡れた夜にWhite Love}

 大げさではなく日本で最強クラスのサビである。これねえ、細かくよく計算されているように感じるのだ。ツボを押さえているというか何というか。ああ、音楽そのものに知識がないのがつらい。

{ただ逢いたくて もうせつなくて 恋しくて…涙}

 ラストもこれ以上ないほど切ない。この部分は桑田佳祐の歌唱力の高さが光る。もうこれ以上涙が出ないところからさらにもう一段階心にズドンと魂をぶつけていくのだ。「もう」のところなんか本当に泣いているんじゃないかと。

 それにしても歌詞からは恋人を待つひとりの姿しか浮かばないのだが、タイトルが優しい。ちゃんと二人でいるのである。でもそれがそういうことだとすると、ラストの「涙」を絶叫せずにはいられない。

 余談だが、私は大学生のころに中央本線で東京から中津川まで独りで乗ったことがあった。目的はぼっち旅行。そのときは冬だった。帰りの道程でなぜかこの曲を延々とリピートしていたのを覚えている。やたら胸に響くのはその寂しい思い出(充実していたはずだった)が蘇るからかもしれない。涙。

       【今日の名歌詞】

外はため息さえ凍りついて 冬枯れの街路樹に風が泣く


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