名曲505 「夢芝居」【梅沢富美男】

ーー色っぽい曲の日本代表。小椋佳の渾身作ーー

【梅沢富美男 - 夢芝居】

 梅沢富美男といえばバラエティーでよく見かける面白いオジサン……すっかりそんなイメージが定着した。頑固おやじというキャラが浸透していくにつれ、少し見せる緩みが愛されていき、すっかりお茶の間の人気者と化した。かなりうまい売り出し方だと思う。きっとテレビで求められるキャラと現実のギャップに苦しんだのではないかと思うが、そこは頭がいいのだろう、柔軟に対応していき今の地位を確立した。と、ご意見番気取りで書いてみる。

 今回の「夢芝居」はまさに代表曲。自身が出演する番組で、事あるごとに前奏が流れるので知っている人も多いだろう。マツケンサンバに匹敵するキャラクターソングである。それでも不快にならないのは、当然ながら名曲だからだ。実はかなりメロディーと歌詞がいい。

{恋のからくり 夢芝居 台詞ひとつ 忘れもしない 誰のすじがき 花舞台 行く先の影は見えない}

 前奏の風格はまさしく芸術。日本舞踊を思わせる。

{男と女 あやつりつられ 細い絆の 糸引きひかれ 稽古不足を 幕は待たない 恋はいつでも 初舞台}

 素晴らしい。日本語の妙である。多くを語らず情景を想像させるだけでいい。恋と稽古の比喩表現が絶妙だ。作詞・作曲は小椋佳。納得である。

 この手の渋い曲を書かせたら天下一品。めちゃくちゃ声がいいですな。ただ、個人的には梅沢富美男バージョンのほうが好み。それだけ梅沢富美男自身に歌唱力と声の力があるのだ。歌手としてももっと大成していたのではないだろうか。

{恋は怪しい 夢芝居 たぎる思い おさえられない 化粧衣裳の 花舞台 かい間見る 素顔可愛い}

{男と女 あやつりつられ 心の鏡 のぞきのぞかれ こなしきれない 涙と笑い 恋はいつでも 初舞台}

 昭和の詞は本当に美しい。ファッションのように、またこういった形式の歌詞が流行しないだろうか。それを古臭いという奴にゃ、富美男が黙っちゃいないよ。喝だよバカモン。

       【今日の名歌詞】

稽古不足を 幕は待たない 恋はいつでも 初舞台

 



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