名曲584 「カルマの坂」【ポルノグラフィティ】

ーー世界観が楽しい秀逸な物語ーー

【Porno Graffitti - Karma no Saka (カルマの坂)】

 歌詞にストーリー性をもたらすのはよほどうまくないと滑ってしまうので難しい。というより、普通に難しい。歌詞が起承転結でまとまるにはよほどの文量になるか、相当抽象的でないといけない。ポルノグラフィティはそれが抜群にうまい。今回は最高傑作を紹介。

{ある時代ある場所、乱れた世の片隅 少年は生きるため、盗みを覚えていった。醜く太った大人達などには決して追いつけはしない風のように 今、空腹を満たすのがすべて 是も非も超え、ただ走る}

{清らかな、その心は穢れもせず罪を重ねる。天国も地獄さえも、ここよりマシなら喜んで行こう。}

{「人は皆平等などと、どこのペテン師のセリフだか知らないけど」}

{パンを抱いて逃げる途中、すれ違う行列の中の 美しい少女に目を奪われ立ちつくす。遠い町から売られてきたのだろう。うつむいているその瞳には涙が。金持ちの家を見届けたあと 叫びながら、ただ走る。}

{清らかな、その身体に穢れた手が触れているのか。 少年に力はなく、少女には思想を与えられず。}

{「神様がいるとしたら、なぜ僕らだけ愛してくれないのか」}

{夕暮れを待って剣を盗んだ。重たい剣を引きずる姿は、風と呼ぶには悲しすぎよう カルマの坂を登る。}

{怒りと憎しみの切っ先をはらい、血で濡らし辿り着いた少女はもう、こわされた魂で微笑んだ。最後の一振りを少女に。}

{泣くことも忘れてた。空腹を思い出してた。痛みなら少年もありのままを確かに感じてる}

{-お話は、ここで終わり。ある時代のある場所の物語-}


 いい小説を読み終えた。さっそく感想を。少年の心情が如実に表現されており、生々しい情景を嫌でも目に入れなくてはいけなかった。世の不条理をどうすることもできない無力の己に対し、ドラスティックな衝動から巻き起こる急展開。現代の行動に移せない弱者への皮肉も込められている。そして移してしまったあとの無情な現実描写も忘れない。カルマ。業。宿命。

 もう一度書くが、この曲の歌詞は最高傑作である。これは本当にドラマ化してほしい。メロディーは正直そこまででもないのだが、歌詞が振り切って満点なのと、構成もよかったので名曲とした。いやー憧れる。感服である。

       【今日の名歌詞】

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