名曲493 「デルモ」【Mr.Children】

ーーセンス大爆発の神々しい世界観ーー

【【Mr.Children】デルモ】

 ミスチルの隠れた名曲といえばというお題があったとしよう。これが千差万別、十人十色であり、人によってまったく系統が変わるのだ。今回私が取り上げる曲はどうだろうか。個人的にトップクラスの完成度だと思うのだが、ミスチルは好き嫌いの振れ幅が高い。苦手な人もいるかもしれない。

{東京―パリ間を行ったり来たりして 順風満帆の20代後半だね バブリーな世代交代の波押し退けて クライアントに媚び売ったりなんかして いつも自己管理 ダイエット 睡眠不足 華やかな様であって 死んだ気になりやってんだ}

 タイトルを並び替えてわかるように、この曲の主人公はモデル。20代後半ならではの充実さと、中堅になったことで大変なことも見えるようになった現実。その葛藤が表れている。

{デルモって言ったら“えっ!”ってみんなが 一目置いて扱って 4、5年も前ならそんな感じに ちょっと酔いしれたけど 寂しいって言ったらぜいたくかな かいかぶられていつだって 心許せる人はなく 振り向けば一人きり}

 非常に完成度が高いサビである。デルモというのはただの言葉遊びのようだが、見方を変えてみると面白い。モデルになりきれていない中途半端な自分を体現しているのではないかと。順風満帆というのは強がりで、本当はまだまだ満足できていない自分像。

{あのね この間ふと思ったの “幸せ”ってつまり何なのよ 結婚であったり恋が女の 全てじゃないにしても 心にポッカリ空いたまんまの 穴を何が埋めてくれるの 嬉しいよな 悲しいよな 時には涙モデル}

 2番のサビで吐き出す心情。これが原因だったのだ。周りからは美しいといわれ続けても、だからといって運命の人には巡り会えない不遇。美しすぎるかしら。

{デルモって言ったら“あっ!”ってみんなが ものめずらし気に見ちゃって 10代の頃はそんな感じを ひたすら夢見たけど 苦しいって言ったら大げさかな かいかぶられていつだって 心開ける人はなく 気が付けば一人きり}

{Oh Yeah この間また思ったの “幸せ”ってつまり何なのよ 子供作っちゃえばってみんなが 軽いノリで言うけど 私にとっては深刻なの 満たされなくていつだって 嬉しいよな 悲しいよな ちょっぴり涙モデル}

 桜井和寿は果たして本当に男なのか。どうしてこんなに女性目線で詞を書けるのだろう。ちなみに最も秀逸なのはラストだと個人的に思う。

{Oh Yeah まだまだ若いの (デルモ) 輝いてたいの (デルモ) 私が世界の (デルモ) 水泳大会の (おりも政夫) Uh… Da… Da… Yeah}

 文字にすると訳がわからないが、徐々に意識を失って眠っていくさまを想像してみると素晴らしい。後半がどんどん寝言みたいになっていくわけだ。そして最後、デルモの高速連呼とオリモの高速連呼がグルグルと回り、夢の中へ堕ちていくのである。

 神曲。ミスチルの中でもトップクラスではないだろうか。これがB面というのだから恐ろしい。まあ、A面の「くるみ」もとんでもない神曲なわけなので、ひと言でいえばレベルが半端なく高かったのである。まだミスチルを知らない人にもぜひ勧めたい曲だ。

       【今日の名歌詞】

いつも自己管理 ダイエット 睡眠不足 華やかな様であって 死んだ気になりやってんだ



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