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アナスタシア・コベキナ 『ellipses』|#今日の1枚

たっぷり踊り回すように奏でられた、重心のしっかりしたソッリマのファンダンゴに始まり、ドビュッシーの最晩年のソナタ、ヴィラ=ロボスのあまりに美しく有名なアリアなどと続く。フランス近代、古典初期、バロック、現代……と、古今のチェロ作品を取り上げる。一見名曲ばかり並んでいるように見えるが、古へのリスペクトが垣間見える新作も挟み込まれたりして、二項対立に陥りがちな「今」と「昔」を、自然な「Ellipeses=楕円」で繋いでいる聡明な一枚。

個人的にめちゃめちゃいいなと思うのは『Gallardo pour violon et tambourin』。チェロとタンバリンというミニマムな編成とは思えない熱量で、アクセントのたびに重さの乗る音がなんとも俗っぽく生々しく妖しく魅惑的。ガイヤルドって宮廷で演奏されるものだけに、もう少し控えめなのかなと思ったりしていたのだけど、この演奏はどうしても大衆が足を出して踊り狂っている様子を思い浮かべてしまう。上品な面をした人々が化けの皮を剥がすような。アツくていい。

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