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(音楽話)11: Patti LaBelle “Love, Need And Want You” (1983)

【多様性】

Patti LaBelle “Love, Need And Want You” (1983)

Patti LaBelle。1944年、米国ペンシルベニア州フィラデルフィア生まれ。62年にコーラス・グループThe Blue Bellesとしてデビュー。ブラック・コンテンポラリーな楽曲だけでなくロックやソウル、R&B、ゴスペルなど多ジャンルな音楽性で一目置かれる存在になります。77年からはソロ活動を開始し、80年代は映画サントラやデュエット曲などで引っ張りだこに。通り一辺倒ではない可用性の高い歌声を武器に次々とヒットを飛ばし、90年代には2度グラミーを受賞。2001年にはゴスペル・アルバムをリリースして大ヒットするなど、彼女の音楽テリトリーの広さは、多様性を求める現代社会を先取りしていたとも言えます。

この曲は83年発表のアルバム「I’m In Love Again」収録のミディアム・テンポな名曲(多くのシンガーがカバーしています)。サウンドはまさに正統派、クラシカルでスウィートな旋律とサウンドをバックに、至ってシンプルな言葉「Love」「Need」「Want」をあなたに歌い掛けています。ソウルであり、R&Bであり、ブラック・コンテンポラリー。50年代のコーラス・グループがゆったりダンスしながら歌っている様を想像できるし、ストリングスが60年代ブラック・コンテンポラリーのように心地良く揺れるし、70年代ソウル・トレイン・ライクなチルアウトも感じられる。そして80年代当時のサウンド・アレンジでくっきりした音粒。この1曲で50-80年代を一気に体感できる。Pattiの歌声も実に鮮やかで、良い意味でクセがなく、胸焼けも腹下しも心配なし。なによりも余裕を感じさせる懐の深さが声の深淵に表れているように思います。

多様性。この柔軟な姿勢は非常に尊い。同時期に登場したカッコいい女性シンガーは他にもたくさんいますが、Pattiほどの多様性は誰も持ち合わせていません。ジャンルに対するしっかりとした敬意を示しつつ、かといってそこに囚われずに自由にジャンルを行き来する様は…そうですねぇ、まるでPrinceのよう(彼もまたPattiのファンでした)。

こうした彼女の姿勢が後世にもたらした影響は計り知れません。誤解を恐れずに言うと、世間一般にポピュラーに認知され人気を博してきた後輩たちーーーWhitney HustonもMariah Careyも、Alicia KeysもLady GAGAも、Ariana GrandeもLizzoも、Nikki MinajもCardi.Bも、Patti LaBelleが居なかったら存在していないかもしれない。例えばLady GAGAはジャンルに囚われない楽曲が多い印象ですが、それでもまだPattiには敵いません。なぜ?Lady GAGAはどこか似通った構成・味付け・意味合いの楽曲が今も多いからです。Pattiはその点、楽曲によって印象はガラッと変わります。この機会にYouTubeで色々探してみてください。

その肩の力の抜き加減、自由さ、懐の深さ、ジワーッとくる歌声…多様性は大姐御から学べ。
特にアメリカの国民全員は今一度、Pattiを聴いた方がいいのかもしれませんね…

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