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(音楽話)55: Whitney Houston “Exhale (Shoop Shoop)” (1995)

【歌姫】

Whitney Houston “Exhale (Shoop Shoop)” (1995)

「歌姫」という言葉、近年あまり聞かなくなりました。性別を言及することへの難しさ、多様性への配慮などの時代背景もあるでしょうが、明確に誰もが認める「アイコン」が生まれにくい状況になったというのが一番大きな要因ではないかと思います。インターネット、スマホ、SNS、リモート環境…いずれも共通のプラットフォームと言えますが、それはあくまでもプラットフォームという器。「みんなが持っているもの」ではない。各々が持っている世界観・価値観がプラットフォーム上に展開され、時に共感や賛同が、時に誹謗や中傷が発生する。そして己の価値観を他者に承認されたいが故に、言動が変節したり虚言することもありえる。現代はつまり、「共通項」を探し出しているのであって、「共有項」を探しているわけではない。シェアする/共有するという言葉が当然のように使われていますが、正確にはシェアなどしていません。単に他者の価値観と自身のそれを照合して共通・共感できるものに「いいね」してるだけです。

こう考えると、「歌姫という誰しもが認めるアイコン」はもう生まれません。皆が「共有する」価値観が成立しづらいからです。良い・悪いではありません、そういう時代だということを認識しなければならない。「みんな知ってるあの人」は、みんなが知ってるだけであって、みんなが同じ感想を抱く人ではない。恐らくその傾向が覆ることは、もうないのかもしれません。

だからWhitney Houstonのような「歌姫」は、今の世界には登場しません

1985年にアルバム「Whitney Houston」とシングル”Saving All My Love for You”であっという間に米国どころか世界を撃ち抜き、数々のヒット曲を生み出し、時に俳優業もやりながら、世界のエンタメ市場に確実に足跡を残した彼女。当時の誰もが「歌姫といえばWhitney」と口にしたはずです。それほど圧巻で圧倒的、唯一無比な歌声でした。しかし…。
92年にシンガーのBobby Brownと結婚し娘も誕生、順風満帆に見えた人生は、その後多くの苦難に直面しました。大麻・コカイン中毒、離婚、アルコール中毒…そして2012年の謎の急逝。さらに2015年には愛娘も22歳で急逝しています、しかも母と全く同じ状況で(バスタブで意識不明)。

Exhale (Shoop Shoop)”は95年の、彼女の代表曲のひとつ。”I Will Always Love You”や”Saving All My Love for You”、”I’m Every Woman””Greatest Love of All”ほどではありませんが、米国では多くのR&Bシンガーが歌う傾向が強い曲。とても勇気づけてくれる歌詞を、Whitneyが優しく、力強く、サラッと囁いてくれます。

説明下手でうまくお伝えできていないのが心苦しいのですが、現代のような、世代だとか趣味嗜好だとかで分断された音楽の楽しみ方が、私には狭苦しいのです。そこを超えたところで鳴り響く音楽に、もっと心躍らせたいのです。この曲のように。

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誰だって恋に落ちるわよ 時にはね
それが間違いだったり 合ってたりするものよ
誰かが勝つってことは 誰かが負けるってこと
でも皆タイミングってあるのよ
溜息つくそんな時がね そうでしょ?

Shoop、shoop、shoop、shoop be doop…

(+)
時に笑ったり 時に泣いたり
人生は教えてくれない それがいつで、なぜかを
あなたに友達ができて その人が良くしてくれるなら
きっとその時が来るわ
一息つくそんな時が(安心して、大丈夫よ)

Shoop、shoop、shoop、shoop be doop…

心が壊れることだってある
自分の気持ちが言葉にできない時ってね
でもその答えは あなたの心の中にあるかも
知ってる場所を探してみたらいい
馴染みの顔や馴染みの場所
自分の奥深く 見つめてみて
もうあなたは半分 答えを見つけてるわ

(+repeat)

Shoop、shoop、shoop、shoop be doop…

(Whitney Houston “Exhale (Shoop Shoop)” 意訳)

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