アーカイブ「備忘録その3:母語を学ぶように第二言語を学べるの?」(記:2019年11月4日)

 留学時のブログのアーカイブです。この頃から授業についていくのに精一杯になり、4週目以降はブログを書くのをあきらめてしまっていたようです…。転載はここまでにして、次回からは留学時に学んだことや今までの知見を活かして、言語習得理論やその応用、具体的な学習法の紹介や提案を書いていきたいと思います。

 というわけで、以下転載です。

はじめに

 相変わらずの1週遅れで備忘録を書いています。実践ベースの授業は、具体的な指導法、その目的などを項目別に見る授業になってきました。理論ベースの授業は、日本語で書かれた本ではかなり情報不足だったんだな、と実感しています。

種々の語彙指導と理論的背景

Elicitation 

 今回学んだ中で印象に残ったものの一つは、語彙指導の多様なアプローチ、Elicitationの重要性についてです。「単語を覚える=訳を覚える」というのがよく英語を勉強する場面でなされる方法ですが、「語彙を学ぶには何が必要なのか(Nation, 1990: 31)」というところを最初に確認しました。
  1. Form (どんな発音/スペル?)
  2. Position (文法的にどんな使われ方?Collocation[他の語との組み合わせ]は?)
  3. Function (Frequency [使用頻度]とAppropriateness [適切な使途])
  4. Meaning (語の意味・その語がどういう受け取られ方をされるか)

 これらを学習者が理解するために、Elicitation(単語を教えるのではなく、学習者から単語を引き出すこと)が求められ、その技術がいくつか紹介されました。(e.g. 絵を使う、類語・反意語、マイム、語にまつわるストーリーなど)
 また、語彙指導におけるPPP(Present-Practice-Production)を用いたレッスンビデオで具体的な指導場面を見学しました。

語彙指導についての考察

 語彙を勉強するとき、日本では多くの場合Readingのレッスンで単語リストが渡されるかと思いますが、上記を考慮すると語彙の提示は独立して行った方がいいと思われます。単語指導は学習者に辞書をひかせたり単語帳で覚えさせたりと、学習者の自習に任せがちですが、レッスンの中の流れで豊富な語彙やその使い方などを提示できるような指導プランを立てていく必要性を感じました。

第二言語習得論

普遍文法の応用

 二つ目は、前回学んだChomskyの理論、Universal Grammar (普遍文法)の第二言語習得への応用についてです。この理論は、人はみんな全ての言語に共通するinnate knowledge(先天的知識)をもって生まれてくるためほぼ例外なく母語習得に成功する、というものです。これについての反論も数多く勉強したのですが、僕の勉強不足でうまくまとめられないので割愛です。(Chomskyの理解がまだ全然進んでいないので、勉強しないといけないです…)

母語習得の先天性は第二言語習得に応用されるか

 今回興味深かったのが、この先天的な能力を第二言語習得に応用することができるかどうか、という点です。主に、下の4つの立場に分かれます。
 1. 応用されない=第二言語は母語を通して習得される(←Fundamental Difference Hypotheses)
 2. 完全に応用される
3. 普遍文法は第二言語の分析に応用される。母語の文法は第二言語の文法に影響しない。
4. 母語を通して理解されない部分のみ、普遍文法が応用される。第二言語は母語の影響を受ける。

 言語習得理論は、この4つのどのスタンスが当てはまるかということを前提としてみていくのがわかりやすい、ということです。
 2の立場をとっている、KrashenのNatural Approachというものをこの後勉強しましたが、次週に続く内容なので、ここで書くのをやめます。

 ある理論や事象を考えるとき、その先行研究に触れることがいかに重要か、ということを実感しています。知識を知識として終わらせず、それにつながる物事を考える基礎としていく姿勢がまだまだ自分には欠けてるな、と思うこの頃です。

追記
 今回noteでブログを再開するにあたって留学時の文を改めて読み返しましたが、「分からないなりによく勉強してたな」という過去の自分への労りと、「勉強不足。考察もあまい!」と、叱りたくなるところもありました。冒頭でも書いたように、これからは種々の理論と自分の経験を組みあわせて色々書いていきたいと思います。誤っているところや意見が分かれるところにも踏み込んでいきたいと思いますので、ご意見・感想などコメントいただけたら幸いです。


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